ベートーヴェン最後のピアノソナタの作曲は、第30番作品109、第31番 作品110と並行する形で進められた。1819年頃にはスケッチに着手しており[1]、1820年9月20日の書簡ではこの曲の作曲を進めている最中であることが報告されている[2]。その後、浄書開始の日付として譜面に1822年1月13日の日付が書き入れられており、この直後に全曲の完成に至ったと思われる[1]。当時のベートーヴェンは『ミサ・ソレムニス』や交響曲第9番などの大作にも取り組んでおり、これら晩年の作品群は同時に生み出されていったことになる[2]。 この曲の完成をもってベートーヴェンは初期より続けてきたピアノソナタ作曲の筆を折る。この曲の後のピアノ作品には『ディアベリ変奏曲』などが続くものの、ピアノソナタが書かれることはついになかった。1822年6月5日付の書簡では次なるピアノソナタが近いうちに出来上がる旨、楽譜出版社の