かつて自分が作品で描いた出来事が、時を経て現実となる−。こうした現象を、20世紀初頭に「シュルレアリスム」(超現実主義)を提唱したフランスの詩人アンドレ・ブルトンは「客観的偶然」と名付けた。静岡新聞の「読者文芸」を担当し、毎秋の「しずおか連詩の会」のさばき手(まとめ役)を務める詩人野村喜和夫さんはある日、この「客観的偶然」に遭遇した。新刊「観音移動」(水声社)は、そのいきさつを記した表題作で幕を開ける。全7編の「シュルレアリスム小説」が投げかけるものは何か。野村さんに話を聞いた。(聞き手=論説委員・橋爪充、写真=東部総局・田中秀樹〈2023年11月に三島市で行われた「しずおか連詩の会」から〉 ) 評論集の副産物 ―水声社の月刊ウェブマガジン「コメット通信」に掲載された作品をまとめた一冊。発端となった「客観的偶然」は、自宅の庭に観音像が引っ越してくるという事象だそうですね。 (野村)2022