××は何のためにあるか、などという懐疑は、余裕のある時でもないと考えない。まして自分の仕事に直接関係する場合には、忘れていたいテーマだ。多くの人がそうしているし、他人に言われたら怒り出しても不思議ではない。しかしいま、「出版社」は何のためにあるのかという議論は、E-Bookが市場の2割を越えた国ではますます活発になっている。もちろん余裕があるわけではない。自主出版こそ出版の本来の姿であるとすれば、出版社は出版にどう関わればいいのか。 タイタニックからインターネットの海へ 歴史的にみても、出版はそれに関わる人々にとってつねに一大プロジェクトだった。出版社が本屋だった江戸時代の出版活動を描いた『江戸の本屋と本づくり』(橋口候之介著、平凡社)を読むと、現代の物価に換算して、やはり数百万円ものコストがかかるプロジェクトを支えるサプライ・チェーンをめぐる知恵と苦労がよくわかる。リスクを誰が取るか、ど