故・佐藤真監督のデビュー作『阿賀に生きる』(1992)が、ニュープリントで公開される。この『阿賀に生きる』は、日本のドキュメンタリー史を語る上で“マストアイテム”と言って良い。映画のデジタル化が急速に進む中、あえて16mmを起こした関係者の英断に頭が下がる一方で、『neoneo web』ではじめてドキュメンタリー映画に触れるような読者にこの作品をどのような温度で伝えたらよいのかは、少し考えた。 観るものがいる限り、映画自体は“作品”として後世に伝えていく事はできる。しかし1990年代から2000年代の日本のドキュメンタリー映画シーンに関わった人間として、佐藤真監督の作品は、その話す口調や、鋭い目線や、著作の文章ひとつひとつと切り離して考えるのが難しい。それぐらい大きな存在であったし、2007年に急逝した衝撃は、未だに私の中に残っている。 結果的に、いただいた4本の原稿からは、それぞれの距離