それは、いまから51年前の1960年5月24日早朝のこと。“グゥオー”というけたたましい音で、小学生の私は目覚めました。何だろうと、2階から外を見ると、家の前にある川がものすごいスピードで海の方へ逆流していました。見たこともない光景に、私には何が起こっているか全くわかりません。ただ茫然。そのうち、周りの大人たちが騒いでいる声が聞こえてきました、“津波がくるぞ!” そうして長い1日と、復興への日々が始まりました。 私の家は当時、八戸で漁業を生業にしていて、太平洋にほど近い河口の前に位置していました。いわゆる、イカ釣り船が並んでいる場所です。いまから見れば、木造船でレトロな風景。逃げ遅れた船は、おもちゃのように激流に翻弄。とうとう、川底までが現れてきました。 小学生の私にも、とんでもないことが起きていることは分かりましたが、どうすればいいかオロオロするばかり。“屋根に上れ、逃げろ”という父の声