腕時計がにがてで、ずっとしていなかったのだが、会社の引っ越しがきっかけで、腕時計を買ってつけるようになった。なぜ会社の引っ越しをすると腕時計を買わなくてはならないのかについては説明が必要になるのだが、わざと説明しないまましゃべったろうかしら。そいで、後から時間軸を戻して説明しなおしたりとか、どっかのしゃれた映画みたいな展開にしようかしら。それはうそで、ふつうに説明すると、理由は、引っ越し先のビルが建物の原状回復にとてもこだわるので、時計を壁にくくりつけるためのねじ穴ひとつ開けられないためである。 そのようなわけで、いまの会社は、どこを見まわしても時計がないという、仕事をする上においてははなはだ心もとなく、不安な場所と化している。会社って時間通りに作業をすることとかが大事なんじゃないのか。だいいち、いま何時なんだ。ねえいま何時? とわたしはよく同僚たちに訊いていた。これはとてもめんどうなこと