1.生立ち 1886年(明治19年)7月24日、東京市日本橋区蠣殻町に生まれる。父が相場師だったことから、家計の浮き沈みが激しく、小学校卒業時には廃学まで余儀なくされるところだったが、潤一郎の秀才を惜しんだ周囲の援助により中学校に進学。谷崎は、築地精養軒の経営者の家に家庭教師として住み込み、学校に通うこととなった。 この辺の事情は谷崎の小説「神童」に詳しい。 1908年(明治41年)東京帝国大学文科大学国文科に入学。 1910年(明治43年)に、戯曲「誕生」、小説「刺青」「麒麟」を発表。翌年、「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立。谷崎の書く小説は、当時、流行していた自然主義文学とは傾向を異にした華麗で妖艶な小説だった。 この辺の事情は谷崎の小説「異端者の悲しみ」、回想「青春物語」に詳しい。 2.谷崎文学の特徴 ① 女性崇拝 処女作「刺青」から晩年の「鍵」「瘋癲老人日記」に