前巻『暴夜幻想譚』刊行から実に3年半……ようやく、此処までたどりつきました。 なんとか10月発売には間に合った模様(笑)。くれぐれも、よろしく! ▲山本タカト画伯による新作描き下ろしです! 『伝奇ノ匣9 ゴシック名訳集成 吸血妖鬼譚』 「恠異ぶくろ(抄)」……日夏耿之介 「クリスタベル姫」……コールリッジ/大和資雄訳 「新造物者」……メアリ・シェリー/瓠廼舎主人訳 「バイロンの吸血鬼」……ジョン・ポリドリ/佐藤春夫訳 「不信者」……バイロン卿/小日向定次郎訳 「クラリモンド」……ゴーチエ/芥川龍之介訳 「吸血鬼」……ガストン・ルルー/池田眞訳 「吸血鬼」……マルセル・シュウオッブ/矢野目源一訳 「モダン吸血鬼」……W・L・アルデン/横溝正史訳 「屍鬼」……小泉八雲/大谷繞石訳 「吸血鬼譚」……日夏耿之介 「嗜屍と永生」……平井呈一 「編者解説」……東雅夫 さてと、
ハーバート・ヴァン・サール編『終わらない悪夢』(金井美子訳 論創社)は、英国の怪奇小説を集めたアンソロジーです。いちばんの特徴は、収録作家の大部分が、無名作家だというところ。このアンソロジー以外では、見かけたことのないような作家ばかりが並んでいます。それゆえ、既訳作品と重複しているものがほぼないという意味で、コストパフォーマンスが、ひじょうに高いです。 品のよい、伝統的な英国怪談とは異なり、どちらかと言うと、扇情的でどぎつい短篇を集めています。多少古びているとはいえ、エンタテインメント志向で書かれた作品が多いので、退屈せずに読めるでしょう。 ロマン・ガリ『終わらない悪夢』 ナチスの悪夢から逃れ、南米で仕立て屋として成功を収めたユダヤ人シェーネンバウムは、隊商の一員になりすました、かっての知人グルックマンと再会します。ナチスの拷問によって、精神的に病んでいたグルックマンは、いまだに恐怖にとり
スティーヴン・キングの実の息子、ということでも話題になった作家ジョー・ヒル。彼のデビュー作である短編集『20世紀の幽霊たち』(白石朗他訳 小学館文庫)が邦訳されました。 全16編の短篇を収めており、700ページ近いボリュームには、少し尻込みしてしまう方もいるかもしれません。しかし、そんな心配は無用です。どれもが粒ぞろいの作品で、まったく飽きさせることがありません。 純粋なホラーはもちろん、マジック・リアリズムあり、ブラック・ユーモアあり、ノスタルジーありと、じつに様々な味の作品が含まれていますが、全体を通して感じられるのは、かっての「異色作家」たちの影響です。作者自身があとがきや作品中で言及する作家たち、ジャック・フィニィ、ロアルド・ダールをはじめとして、レイ・ブラッドベリ、リチャード・マシスン、ロバート・ブロック、彼らの作品に似た味わいが感じられるのです。 実父キングも「異色作家」たちへ
アニオタが非オタの彼女にアニメ世界を軽く紹介するための10本 から派生した一連のエントリが楽しかったので眺めていて、ついうっかり妄想してしまったので。 ファンタジー版がなかったのが意外というのもあり、妄想に拍車がかかってしまいました。ネタものっていっぺんやってみたかったし..... 元ネタにあわせるためにいろいろ作ってるところもありますし、まあネタですのでそこのところ一つよろしくです。あ、あげた本はどれもおもしろい本だと私は思いますが、この10本をいきなり彼氏に渡したら引かれること確実だと思います、はい。 (さらに蛇足ですが、日本人作家の作品、マンガ、アニメ、映画を入れると収集つかなくなりましたので、いわゆる「海外ファンタジー」小説にしぼって選んでます。) ファンタジーオタが非オタの彼氏にファンタジー世界を軽く紹介するための10本 まあ、どのくらいの数のファンタジー小説オタがそういう彼氏を
カフカやカミュと比較されることもある、イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティ。そう言うと、不条理で難解な作風を思い浮かべてしまいますが、事実はその逆。これ以上はないというほどの、読みやすい文章(翻訳を通してではありますが)と、わかりやすさを持っています。 ただ、作品の読みやすさとは裏腹に、その内包するテーマは、一筋縄ではいきません。 強いて言うなら、現代社会における「不安」。これがブッツァーティの主要なテーマといっていいでしょうか。人間が、日常生活で感じる不安感や違和感、そうした要素を、上手く寓意として取り込んでいるのが特徴です。 そして、もう一つ強調したいのは、物語自体の面白さ。ミステリ、SF、ホラーの要素を含むその作品は、ときに限りなく〈異色短編〉に接近します。エンターテインメントとして読んでも、第一級のものなのです。今回はそんなブッツァーティの作品を概観していきたいと思います。 まず
今日からは、本の紹介をしていきたいと思います。最初に何を紹介するか悩んだのですが、とりあえず僕の大好きな作家、フランスの作家マルセル・エーメの『マルタン君物語』(江口清訳 ちくま文庫)を紹介しようと思います。 エーメは異色作家短編集にも入っていますし、近年、代表作『壁抜け男』がミュージカルにもなったので、ご存じの方も多いと思います。作風はあの『壁抜け男』に見られるように、非常にリアルな日常の中にファンタスティックな要素が持ち込まれるといったものです。 本書には、全部で九編の物語が収められていますが、読者はやはり巻頭作『小説家のマルタン』に驚かされるでしょう。まずは作品初頭の数行を引用してみます。 マルタンという、小説家がいた。彼は自分の書く本の中で、主要人物はもちろん、端役にいたるまで、かならず殺してしまわなければ気がすまなかった。最初の章では、元気と希望に満ちている人物でも、たいてい終り
つねづね公言していますが、僕は短編がとても好きです。そういうわけで、必然的にアンソロジーを読む機会も多いです。 そこで、生まれて初めて読んだアンソロジーは何だったかと考えると、たぶん『怪奇小説傑作集1~5』(創元推理文庫)になるでしょうか。最近新装版が出ているので、お読みの方もいるかと思います。国別の編集になっていて、「英米編1・2・3」「フランス編」「ドイツ・ロシア編」となっています。「英米編」の巻数が多いのは、やはりこのジャンルでは、作品量・充実度からいって突き抜けているからですね。 けれど、「フランス編」「ドイツ・ロシア編」は、文学好みの方からも評価が高いようです。というのも、「英米編」の収録作品がいかにもな「怪奇小説」なのに対して、この二巻は、かなり異色な作品が入っているからです。とくに澁澤龍彦編の「フランス編」の4巻のセレクションが凄い! もともとフランスには純粋な英米型の怪談が
泉鏡花「海異記」 --「妖しき海の神の、人を漁るべく海からあらわれた」という設定がすばらしい。漁師である夫が海で魚を釣っている間、陸では海の化け物が人間の子を食おうとやってくる。膳をけとばして「児(こ)を呉(く)れい」という、クライマックスの凄さたるや・・・。ゲーテの「魔王」に匹敵。 漱石「蛇」 ーー漱石は人がどこに恐怖を覚えるかを熟知しており、この短編でもとりたてて何が起こるというわけでもないのに、まさに背筋が凍る。 山本周五郎「その木戸を通って」 --記憶喪失の女性がどこからともなくあらわれ、主人公である武士の妻となり子を産んで、またどこかへ去ってしまうというだけの話しで、いわば民話「鶴女房」など異類婚の系列といえる。ありふれた物語なのに側側と胸をうつのは、この女性の包み込むようなやさしさによって、最初は嫌な男だった主人公が愛を知り、愛に生き、愛を失うからだろう。 するとこの小説は、も
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く