現代の学術情報流通は,「登録」,「保存」,「認証」,「報知」の4つの機能を担う査読誌を中心に成り立っている。学術情報流通の多様化とはこの4機能の実現方法の多様化にほかならない。より詳細には,従来とは異なる対象を4機能で扱う,一部の機能の実行方法を変える,一部の機能を独立させる・実施順序を入れ替える,と言った試みが行われるようになってきている。一方で,4機能自体の見直しを図ることは,提案はされても普及はしていない。本稿ではそれぞれ具体例を見つつ,学術情報流通の多様化の現状を捉えることを試みる。
福井大学など4大学の教授らが絡み、論文の内容を著者と別の専門家がチェックする「査読」の過程で不適切なやりとりをしていた問題で、文部科学省は23日、「国民の科学への信頼を揺るがす」として、適正な査読のあり方について日本学術会議に審議を依頼すると発表した。 【写真】調査委「こんなことが起こるのか」 査読操作の流れ 査読は、学術誌に投稿された論文の内容や学術的な意義を確認する重要な手続き。この問題では、本来自分でコメントを書くべき、千葉大、金沢大、浜松医大の査読者が、福井大の著者に文案を依頼。著者らは代筆してコメント案を提供していた。福井大の調査委員会などは、不適切な「査読操作」と認定した。 ただ、文科省や各大学には、同様の「やらせ査読」のような行為について明確な禁止規定はなかったという。査読の不適切事例や適正なあり方について学術会議に聞き、再発防止策として周知する考えだ。 また、科学技術振興機
IOPP(IOP Publishing)は、1月31日、査読プロセスをすべて公開する査読の透明化を全OA(オープンアクセス)ジャーナルに適用すると発表した。 これにより、論文の読者は、初期審査から採録決定に至るまでのすべての査読プロセスに関わる履歴(査読者レポート、編集者の採否決定レター、著者の返答)の閲読が可能になるという。 IOPPは、ポートフォリオ全体に査読の透明化を適用した初の物理学系出版社であることに言及。本取り組みは説明責任を果たすことに役立ち、査読者の貢献に対する認知度を高めることにつながるなどと述べた。 [ニュースソース] IOP Publishing launches portfolio-wide transparent peer review on its OA journals — IOPP 2022/01/31 (accessed 2022-02-01)
Research Open access Published: 14 November 2021 A billion-dollar donation: estimating the cost of researchers’ time spent on peer review Balazs Aczel ORCID: orcid.org/0000-0001-9364-49881, Barnabas Szaszi1 & Alex O. Holcombe2 Research Integrity and Peer Review volume 6, Article number: 14 (2021) Cite this article BackgroundThe amount and value of researchers’ peer review work is critical for acad
学術情報流通に関連した多様な話題を提供する学術出版協会(Society for Scholarly Publishing:SSP)運営のブログ“The Scholarly Kitchen”に、2021年9月9日付けで記事“The dawn of the age of duplicate peer review”が掲載されています。筆者は研究データ共有支援ツールの開発企業の創設者・プロジェクトリーダーであるTim Vines氏です。 プレプリントを査読する取組の存在に触れつつ、当該のプレプリントが学術誌での査読プロセスにある場合、査読者の労力浪費につながる「重複査読」(duplicate peer review)となりうるケースがあると指摘しています。ただ、当該のプレプリントについての正当な議論と重複査読とを区別する明確な基準はないとし、プレプリントの台頭が、従来行われてきた「順を追った」(
CA2000 – 動向レビュー:米国のIMLSが戦略的5か年計画で描くこれからの図書館像-地域変革における触発機能- / 豊田恭子 オープン査読の動向:背景、範囲、その是非 同志社大学免許資格課程センター:佐藤 翔(さとうしょう) はじめに オープンサイエンスの潮流の中でオープンアクセス(研究成果のオープン化)、研究データ公開に次いで注目されているトピックの一つに、査読のオープン化(Open Peer Review、以下「オープン査読」)がある。オープン査読には研究の透明性向上やいわゆるハゲタカ出版者(CA1960参照)判別への寄与等、多くの期待がかけられ、導入する雑誌・出版者も増えている。 一方で、オープンサイエンスに関するあらゆるトピックがそうであるのと同様に、オープン査読とはいったい何なのか、査読の何を「オープン」にしようとしているのかは、話者やプロジェクトによりまちまちであり、
2021年3月25日、オープンアクセス誌eLifeは、様々なバックグラウンドを有する研究者を査読に参加させ、査読における多様性を促進するためにPREreviewと提携することを発表しました。 2017年に設立されたPREreviewは、査読システムにさらなる公平性・多様性をもたらすことを目的としており、プレプリントの査読に関するプラットフォームの運営や、より良い査読のための学習リソースの提供、査読を担うコミュニティの育成等に取り組んでいます。 eLifeは2020年に、世界中の研究者がオンラインでプレプリントの内容を議論する“preprint journal club”を含むPREreviewの様々な取組に協力しました。また、若手研究者が査読に貢献できるようにするための、オンラインの指導プログラム“PREreview Open Reviewers”のパイロット版への支援も行いました。 今回
Science誌は、3月1日、"The $450 question: Should journals pay peer reviewers?"と題する記事を公開した。 本記事は、Researcher to Reader Conference(2月23・24日開催)において、査読者への報酬に関する議論が行われたことを紹介。 賛成派は、営利出版社が査読者に450ドルを支払うことが妥当とするマニフェスト"The 450 Movement"を掲げ、それにより査読結果を得るまでに長い時間がかかることなどの欠点を改善できると主張した。一方で、反対派は、購読料の高騰や非倫理的な査読の蔓延を招くなどの意見を述べたという。 また、「キャッシュVSその他の報酬」「査読者への報酬を支払う余裕がジャーナルにあるか」「査読者とジャーナル間の契約」など、そのほかの議論の詳細も示している。議論終了後、査読者への支払いに
2021年1月8日、Accountability in Research誌に米国・テキサス大学オースティン校のTom J. Crijns氏らによる共著論文“The effect of peer review on the improvement of rejected manuscripts”が掲載されました。本文は有料ですが、要旨(Abstract)は公開されています。 論文では、却下された論文が別の学術雑誌で出版される際に、与えられた査読コメントが論文の改善に利用されているかについて調査しています。調査にあたっては、とある整形外科学のトップジャーナルの2012年の250報の論文の却下通知を無作為に抽出し、実行可能な査読者からの提案を特定しています。PubMedとGoogle Scholarで検索し、投稿時の論文と出版された論文を比較することによって、査読者からの各提案が反映されているか
岐路に立つ査読と、その変化に踏み込むPublons 筑波大学学術情報部:松野 渉(まつのわたる) 1. はじめに 学術論文の出版とそれを巡る一連の学術コミュニケーションにおいて、投稿論文を審査するプロセスである査読は無くてはならないものである(1)。しかし近年、査読制度に起因する研究不正や、査読の実施を詐称する「ハゲタカ出版社」(2)の出現、論文数に対する査読者の不足など、査読を取り巻く状況には多くの問題が生じている。学術コミュニケーションの世界では現行の査読を取り巻く状況を改善するべく様々な取り組みが行われているが、本稿では「査読登録サービス」として近年大きく注目を集めるPublons(3)に焦点を当て、サービスやステークホルダーとの連携、その他の様々な取り組みについて概観する。 2. 査読の抱える問題 2.1. 査読とは 査読とは、学術雑誌に投稿された論文を、外部の研究者が査読者となっ
学術出版における主な利害関係者である研究者、ジャーナル編集者、査読者にとって、「信頼」はベースとなる要素です。「信頼」は、この三者のやり取りにおけるさまざまな接点で見られます。まさにその接点で、信頼が損なわれる可能性もあります。この記事では、三者の視点に注目しながら、査読の信頼性に疑問が生じる要因を掘り下げます。 著者から見た信頼 研究者は、編集者が、原稿の改善を後押ししてくれる最高の査読者を選ぶはずだと信じています。また、査読者が守秘義務を守り、公正な判断の下で建設的なフィードバックを提供してくれることを信じています。一方、出版を目指す途上で、善意の研究者が時に道を踏み外すことがあります。学術研究が世界的に増加していることは確かな事実であり、「出版するか滅びるか」という文化は疑問視されているものの、研究者の成功は主として出版点数と掲載誌のステータスに基づいて評価されるということが続いてい
公開サーバーにアップロードされるプレプリント(査読前論文)は、誰でも自由に閲覧したりコメントしたりすることができます。しかし、査読プロセスを経ていないため、品質や信頼性が低いケースが多いことも事実です。一方、専門家のフィードバックが得られる機会でもあるため、プレプリントは著者にとってメリットがあります。この記事では、プレプリントの利点と課題を確認した上で、その人気の高まりが査読への信頼を損なっていないかを考えます。 プレプリント 出版の利点 好ましい出版形態としてプレプリントが急速に人気を集めている理由は、次の通りです。 研究成果の発表を迅速化し、優先権を確保する査読付きジャーナルに原稿を投稿すると、複数回のチェック、レビュー、修正依頼を経て、アクセプトまたはリジェクトの判定が下されます。このプロセスには数か月かかることも珍しくありません。ただ、判定結果を待つ間に他の人が同じアイデアで論文
先日、プレプリントの最新の動向紹介にて、正規の学術雑誌においてもCOVID-19関連の論文が取り下げられているという事例を紹介しましたが、その事例から、研究データの扱いに関わる、新たなジャーナルポリシーが生まれました。 2020年6月、医学分野の2大有名誌Lancet誌とNew England Journal of Medicine誌(NEJM)は、ハーバード大学Mehra教授チームの論文を取り下げました。これら論文のデータ解析に使用されたSurgisphere社のDBに不審な点が認められた上、再検証をしようとしたところ、データへのアクセスが同社にしかなく、検証不能であったことによります。 再発防止を念頭に、Lancet誌が2020年9月18日に打ち出したジャーナルポリシーは、以下の通りです。なお、このポリシーは、発表と同時に施行されています。 1)著者によるデータ確認の宣言 論文の共著者
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