高級引きこもり、デ・ゼッサント 『さかしま』は、ジョリス・カルル・ユイスマンスが1884年に出版した、「デカダンスのバイブル」とも呼ばれる奇妙な小説だ。好きな人は猛烈に好きで、一番の愛読書に挙げる。しかし、嫌いな人はその記述にうんざりして、ページをめくる指も止まりがちだと言う。 主要な登場人物は、主人公のデ・ゼッサント、ただひとり。 彼は貴族の末裔。神経質で華奢な独身男。17歳で両親を亡くしたが、さいわい財産はある。 イエズス会の学校で神学やラテン語を学び、卒業後は、貴族から娼婦まで、いろいろな人々と広く深く交際して、遊び尽くし、体には病を心には嫌悪感を持つに至った。 貴族は退屈で、聖職者は偽善的。思想家はアホで、遊び仲間は空虚。女性への情熱さえも、ついには涸れ果てた。だいたい、どいつもこいつも無礼者だし俗物だ。私にとっては大切な思想や芸術を、内心、馬鹿にしていやがる! デ・ゼッサントは結