1950年代から60年代にかけて、米国の社会科学では近代化論なるものが隆盛を誇っていた。 当時、植民地支配から次々と独立を遂げていった国々をいかにすれば欧米のような近代国家へと成長させることができるのかが近代化論のテーマだった。もちろん、その背後には、生まれたての開発途上国がソ連の影響下に入ることを阻止するという問題意識が控えていたわけだが。 近代化論の影響は経済学、政治学、社会学に及んだが、マスコミュニケーション研究もその例外ではなかった。コミュニケーション発展論(communication and development)と呼ばれる研究の系譜がそれにあたる。マスメディアを使って途上国の近代化をいかに促進することができるかを研究していたわけだ。 それでは、どうやればマスメディアは近代化に貢献できるのか。 コミュニケーション発展論の研究者たちは途上国の人たちのことをこんな風に見ていた。途上