茨城県北部から中央部に流れる那珂川の河口付近で捕れたサケを使った「初霜漬(はつしもづけ)」という料理が、かつてあった。江戸時代には水戸藩から幕府と朝廷に献上されていたという。ある家でしか作ることができず、詳細なレシピはわかっていない幻の郷土料理に迫りたいと思った。 那珂川は栃木・那須岳に源を発し、ひたちなか市と大洗町の境界で太平洋に注ぐ。県内の川沿いには二つの漁協があり、サケ漁は今も続いている。 初霜漬の手がかりを求めて、関係文書を当たった。月刊誌「常陽藝文」(1989年11月号)のサケ特集などによると、切り身を塩水に浸しておいた後、麴(こうじ)と米を混ぜた中に切り身を漬け込むのだという。 ■ 「水戸市史」には「那珂川の鮭は、毎年水戸藩から、京都の朝廷に献上されたことで有名」とある。サケ漁の起源は、水戸藩初代藩主の徳川頼房の時代にさかのぼる。中心的な役割を果たしたのが、青柳村(現・