タグ

ブックマーク / call-of-history.com (46)

  • 『あだ名で読む中世史―ヨーロッパ王侯貴族の名づけと家門意識をさかのぼる』岡地稔著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    大王、禿頭王、肥満王、吃音王、短軀王、赤髭王、血斧王、征服王、碩学王、賢明王、敬虔王、獅子王、獅子心王、欠地王、聖王、悪王、残虐王、善良王に端麗王・・・中世ヨーロッパの王侯貴族はなぜ「あだ名」がついているのだろうか。それに、シャルル、ルイ、フィリップ、アンリ、ジャン、カール、ルートヴィヒ、ハインリヒ、オットー、フリードリヒ、ウィリアム、ヘンリ、リチャード、エドワード・・・同じ名前の違う人物が何度も何度も繰り返し出てくるのも不思議ではないだろうか。なぜシャルルの子もシャルルでオットーの子もオットーでエドワードの子もエドワードなのだろうか。 書ではそのような中世ヨーロッパの名前の付け方や「あだ名」の流行から、彼らの家門意識の成立過程を非常に丁寧に史料を読み解き、紐解いていく好著である。 書によれば史料に残る限りで「あだ名」がつけられた王侯貴族はメロヴィング朝末期からカロリング朝期(八世紀)

    『あだ名で読む中世史―ヨーロッパ王侯貴族の名づけと家門意識をさかのぼる』岡地稔著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    kamayan
    kamayan 2020/10/16
  • 「安倍晴明伝説 (ちくま新書)」諏訪 春雄 著

    陰陽師安倍晴明というと、様々な伝説に彩られた日史上のスターの一人である。死後の平安時代後期から様々な伝承が語られ始め、現代でも小説映画、マンガなど様々な創作作品に登場して人を魅きつけている。僕は丁度世代的に八十年代後半、荒俣宏の「帝都物語」で知り夢枕獏の「陰陽師」や菊池秀行作品など伝記小説で認識した感じだ。 実在の安倍晴明は様々な伝承や創作で語られるような呪術妖術に長けた超能力者ではなく、地味な、しかし政治力に長けた遅咲きの官僚である。平安時代、中国から伝わった陰陽五行思想や道教・密教、修験道などを総合して登場した陰陽道を統括する部署として陰陽寮という組織があった。晴明も陰陽寮に所属していたが陰陽道の能力的にもそれほど秀でていたわけではなく、長らく出世コースから外れていたらしい。彼が歴史の表舞台に登場するのは四十代に入ってからで、丁度藤原道長が権力を掌握していく過程で藤原氏や花山・一条

    「安倍晴明伝説 (ちくま新書)」諏訪 春雄 著
    kamayan
    kamayan 2016/12/19
  • 人口動態からみた古代ローマ帝国の社会

    古代ローマ帝国を人口から眺めてみよう。あくまで数少ない文献史料と様々な考古学的調査に基づいての暫定的な推定値ではあるが、当時の人口動態とその人口動態を背景とした社会の様子が「古代ローマを知る事典」に概説されている。 まず首都ローマの人口は、イタリア全土を支配下においた紀元前270年頃の時点で約九万人だったが、以後カルタゴを滅ぼし、マケドニアに侵攻し、シリアを制し、ギリシアのアカイア連邦を撃破して地中海の覇権を確立した前130年頃には約三七万五千人に膨れ上がり、血で血を洗う権力闘争の果てにオクタヴィアヌス(アウグストゥス)が即位、アウグストゥスが崩御した西暦14年の時点で約八〇万人の超巨大都市に成長、最盛期となった五賢帝最後のマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝時代の西暦164年にはついに100万人となった。西暦164年のローマ帝国総人口は6130万人で、当時の地球総人口三億人の約二〇%が

    人口動態からみた古代ローマ帝国の社会
    kamayan
    kamayan 2016/04/10
  • 「コレモ日本語アルカ?――異人のことばが生まれるとき」金水 敏 著

    「さあ、のむよろしい。ながいきのくすりある。のむよろしい。」 映画、マンガ、アニメ、小説など創作において中国人のキャラクターが描かれるときに特徴的な言葉遣いがある。実際の中国人が使うことはない<アルヨことば>はどのように誕生してきたのか、「役割語」を専門とする著者がそのルーツと歴史的な形成過程を整理したのが書である。 <アルヨことば>の主な特徴<アルヨことば>の主な特徴として以下の四点が整理されている。(P3) A 文末に「ある」がついて断定を表す(「ある」語法と呼ぶ)。 B 文末に「よろし(い)」がついて命令ないし勧誘を表す(「よろしい」語法と呼ぶ)。 C 「が」「を」等の助詞が抜け落ちている。 D 文と文をつなぐ接続詞や接続助詞も抜け落ちて、文と文の関係がつかみにくい。 宮沢賢治作「山男の四月」と中国人蔑視このような<アルヨことば>の初出は宮沢賢治作「山男の四月」(1921年)である

    「コレモ日本語アルカ?――異人のことばが生まれるとき」金水 敏 著
    kamayan
    kamayan 2016/01/25
  • 「食糧の帝国――食物が決定づけた文明の勃興と崩壊」

    人類史における都市の繁栄を生み出したもの、それは糧の余剰と交易であった。余剰糧が富を生み、富が都市と社会、そしてそこで暮らす人びとの生活を繁栄させる。書は、その歴史上様々なかたちで現れてきた「糧を礎とした社会」、すなわち「糧帝国」の盛衰を通して、現代もまたその歴史上の「糧帝国」と共通する特徴を備え、それゆえに巨大なリスクを抱えていることを浮き彫りにする一冊である。 「糧帝国」成立の3つの条件1) 農民が自分たちでべる以上の糧を生産できること 2) 買い手に売るための取引手段が存在すること 3) 経済的利益をもたらすまで糧を保存できる手段があること 書によれば、古代メソポタミア、エジプト、ギリシア、ローマ、中国から大英帝国まで「糧帝国」は上記の3つの条件が成立することによって誕生してきた。すなわち、余剰糧の生産、取引の仕組み、保存と輸送である。歴史上、この料の生産

    「食糧の帝国――食物が決定づけた文明の勃興と崩壊」
    kamayan
    kamayan 2015/12/14
  • 「英雄はいかに作られてきたか フランスの歴史から見る」アラン・コルバン著

    フランス史上の国民的英雄・偉人たちの多くが十九世紀、国民国家フランスの誕生とともに「つくられた」。偉人が誕生し、称揚され、そして国民的英雄として歴史に刻まれ、忘れ去られていく過程をアナール学派の代表格アラン・コルバンが子供に語る体で描いた英雄誕生のフランス社会史。 フランスにおける国民的偉人のモデルとして大きく以下の四つに分類される。 1)プルタルコス的軍人 2)キリスト教的聖人 3)啓蒙主義的偉人 4)ロマン主義的英雄 プルタルコスの対比列伝はルネサンス以降広く読まれ第一帝政時代にナポレオンとその将軍たちはプルタルコスが描く古代ローマの英雄たちと比較して語られるようになった。軍人としての勇敢さや戦場で死んだもののヒロイズムがその特徴だが、このようなタイプの英雄観は近代戦以降戦争の悲惨さが強調され兵士一人ひとりへと注目が移ったことで大きく後退したという。キリスト教的聖人の特徴は自己犠牲と献

    「英雄はいかに作られてきたか フランスの歴史から見る」アラン・コルバン著
    kamayan
    kamayan 2015/11/25
  • 「世界を変えた火薬の歴史」クライヴ・ポンティング 著

    三大発明といえば火薬・羅針盤・活版印刷術である。中でも火薬は産業技術から軍事技術まであらゆる面で中近世世界に革新を促すものだった。八~九世紀ごろの中国で誕生し、宋代の中国で一気に実用化されて様々な発明品を生み出し、イスラーム世界を通じて拡大し洗練され、十四~五世紀の欧州へと渡って社会構造を激変させ、やがて近代を生みだす引き金になった。十九~二〇世紀初頭の高性能爆薬の発明によって軍事技術として一線を退くまでの黒色火薬の歴史を概観する一冊。 火薬は、軍事技術として数多の人々の命を奪い傷つけることになるわけだが、皮肉なことに、錬丹術師たちによる不老不死の探求の中で生み出された。 火薬は硝石と硫黄と木炭の混合物だが、それぞれ硝石は延命に硫黄は精力増強に効くと考えられていた。これを混ぜあわせるようになるのが四世紀頃。808年の記録に硝石と硫黄とウマノスズクサ(炭素を含む)による発火作用の記録があり、

    「世界を変えた火薬の歴史」クライヴ・ポンティング 著
    kamayan
    kamayan 2015/09/25
  • 「オカルトの帝国―1970年代の日本を読む」一柳 廣孝 編著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    映画、TV、小説、アニメ、マンガ、ゲームなどのサブカルチャーから宗教・思想さらには日常生活の隅々までオカルトは薄く広く拡散している。日におけるオカルトの広がりのルーツを辿ると1970年代に行き着く。では、現代日という「オカルトの帝国」の原風景といえる1970年代のオカルトの大流行はどのようなものであったのだろうか。「閉ざされた知であるオカルトが白日の下にさらされた1970年代」を描く論文集である。 ただし、絶版。ひと通りネット書店を見て回っても購入することは出来ないようなので、興味がある方は図書館か古書店で。 目次 第一部 オカルトの日 第一章 オカルト・ジャパン・シンドローム――裏から見た高度成長 第二章 小松左京『日沈没』の意味 第三章 ディスカバージャパンと横溝正史ブーム 第二部 メディアのなかのオカルト 第四章 エクソシスト・ショック――三十年目の真実 第五章 「ノストラダ

    「オカルトの帝国―1970年代の日本を読む」一柳 廣孝 編著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    kamayan
    kamayan 2015/09/03
  • 「項羽と劉邦の時代 秦漢帝国興亡史」藤田勝久 著

    紀元前221年、秦帝国は戦国時代を終わらせて中国を統一したが、統一からわずか十五年で滅亡した。なぜこれほど短期間で滅亡したのか、書では秦と、秦を滅ぼす人材を次々と輩出した楚との社会システムの違いに注目して、項羽と劉邦の時代の変化を描いている。 秦帝国滅亡の要因として、第一に始皇帝死後の権力闘争、第二に大規模な土木工事と対外戦争による民衆への負担、第三に急激な統一による統一政策の不備、第四に秦と違う風土を持つ社会に秦の制度を適用させようとしたことによる軋轢、などが挙げられ、特に、第四の「秦から遠方の地方で、風土と習俗が異なる地域社会に不満が蓄積したこと」が大きな問題であったとされる。 戦国時代の楚の制度と秦の制度の比較、「陳勝・呉広の乱」によって建てられた張楚国の体制、項梁・項羽が楚懐王を建てて建国した楚の体制、項梁死後項羽によって築かれる西楚覇王の体制、そして漢王となった劉邦が敷いた秦を

    「項羽と劉邦の時代 秦漢帝国興亡史」藤田勝久 著
    kamayan
    kamayan 2015/08/13
  • 「臨時軍事費特別会計 帝国日本を破滅させた魔性の制度」鈴木 晟 著

    太平洋戦争へ至る過程で軍部の台頭を許した大日帝国の制度的欠陥の一つが「臨時軍事費特別会計」である。 臨時軍事費特別会計は大日帝国下で戦時に戦費支出目的で定められる特別会計制度で日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦・シベリア出兵、日中戦争(支那事変)・太平洋戦争の四度設けられた。それぞれの支出額は日清戦争:約二億円、日露戦争:約十五億円、第一次・シベリア:約八億八千万円、日中・太平洋戦争:約一五五三億九千万円。 その特徴は 「一般会計とは異なり、いずれも戦争の勃発から終結までを一会計年度とし不足分は追加予算で補われる」(P90)こと「戦争の終結までが一会計年度であるので、その間に陸海軍省は議会にたいして決算報告の義務がない」(P96)ことである。 臨時軍事費特別会計法(昭和十二年法律八十四号) 第一条 支那事変ニ関スル臨時軍事費ノ会計ハ一般ノ歳入歳出ト区分シ事件ノ終局迄ヲ一会計年度トシテ特

    「臨時軍事費特別会計 帝国日本を破滅させた魔性の制度」鈴木 晟 著
    kamayan
    kamayan 2015/07/29
  • 江戸の庶民の味「天麩羅(てんぷら)」誕生の歴史 | Kousyoublog

    江戸を代表する料理として挙げられるのが「てんぷら」である。「てんぷら」がいつどのように誕生したのか、必ずしも定かではないが、「東京天ぷら料理会 東天会 天ぷらの起源と語源」によれば、「『料理道記』(1669)の「てんふら 小鳥たたきて鎌倉、えび、くるみ、くずたまり」が初出とされ」、「衣揚げの記述は「どじょうくだのごとくきり、くずのこたまこを入、くるみ・あふらにてあげる『料理献立集』(1671)」が最初」だという。一方、原田信男編「江戸の文化」では「寛延元年(1748)の『料理歌仙の組糸』に、「てんふらは何魚にても饂飩の粉まぶして油にて揚げる也」とあるのが天ぷらの文献上の初出」(P132)とされる。前者は言葉だけ、後者はてんぷらそのものを表しているという違いであろうか。 明暦の大火(1657)後の復興過程で、江戸の町には様々な屋台が登場した。特に防災都市化する過程で各地に設けられた火除地

    kamayan
    kamayan 2015/06/08
  • かつて、世界の至る所で「沈黙交易」が行われていたという

    世界史上、様々な地域でたびたび見られた商業形態の一つに沈黙交易というものがある。 十五世紀ごろ、西アフリカではマリ帝国の商人とニジェール地方の商人との間で以下のような取引が行われていた。 (赤坂憲雄著「異人論序説」P60) サハラからラクダに積んで運ばれてきた岩塩は、マリ帝国にはいると、長蛇の列をなした人々の頭にのせて金の産地まで送られる。ある水のほとりまで来ると、一行は岩塩を一列にならべておき、半日ほど来た道をもどる。金の産地の黒人は船で金を運んできて、交換をのぞむ塩の塊のわきに、それと見合う量の金をおいて姿を消す。塩をおいた側がもどり、そこにある金の量に満足すれば、金をとって去り、あとから金をおいた黒人があらわれて塩をとる。こうして、たがいに接触することも言葉をかわすこともなしに、塩と金との交換が成立したわけである。 あるいは日でも諸国の峠路の道中に中宿というものがあったと伝えられて

    かつて、世界の至る所で「沈黙交易」が行われていたという
    kamayan
    kamayan 2015/05/02
  • チンギスの称号はカン?ハン?カーン?ハーン?

    モンゴル帝国の建設者、「蒼き狼」の異名でも知られる歴史上屈指の「世界征服者」というと、チンギス・・・カン?ハン?カーン?ハーン?ということで、混乱する彼の称号について簡単にまとめ。 歴史学上正しい呼び方はチンギス・カン結論からいうと、歴史学上正しいのは、ちょっと前までチンギス・ハンだったが今はチンギス・カンである。 「カン(ハン)」はトルコ系・モンゴル系遊牧民が用いていた称号で王や族長を表す。ここでやっかいなのがモンゴル語の発音では丁度「カ」と「ハ」の間の発音であることで、時代によってカに近かったりハに近かったりするが、近年の研究でチンギスが生きていた十三世紀は「カ」に近い音だったことがわかった。一方で、現代モンゴル語ではカンではなくハンと発音するが、モンゴル史では当時の発音に則ってほぼ「チンギス・カン」と呼ぶことが定着しつつある。 また、「カーン(ハーン)」について、それぞれの部族の長が

    チンギスの称号はカン?ハン?カーン?ハーン?
    kamayan
    kamayan 2015/04/19
  • 「幕末日本と対外戦争の危機―下関戦争の舞台裏」保谷 徹 著

    幕末、諸外国と修好通商条約が結ばれて一気に開国すると、それに反対する人びとによる外国人排斥運動(攘夷)が盛んになった。過激な攘夷運動の盛り上がりは諸外国を警戒させ、やがて米仏艦隊による長州報復攻撃、英国海軍と薩摩との薩英戦争、さらに英国による日侵攻作戦の立案、そして長州征伐と連動しての下関戦争と対外戦争の危機が顕在化していくことになる。書は主に英国側の資料を中心にして当時日が直面していた対外戦争の危機について具体的に描かれた一冊である。 奉勅攘夷と横浜鎖港問題日米修好通商条約とそれに続く安政の五カ国条約によって諸外国に対し神奈川・長崎・新潟・兵庫の開港と領事裁判権、関税自主権の放棄、片務的最恵国待遇などが約されると、日中に攘夷の嵐が吹き荒れ、外国人に対するテロ行為が頻発。文久二年(1862)、島津久光の行列を遮ったとして英国商人リチャードソンらが殺害されると、英国との間で緊張が高ま

    「幕末日本と対外戦争の危機―下関戦争の舞台裏」保谷 徹 著
    kamayan
    kamayan 2015/04/18
  • 「江戸幕府崩壊 孝明天皇と『一会桑』」家近 良樹 著

    ペリー来航から大政奉還・王政復古・鳥羽伏見に至る江戸幕府解体の過程は長く西南雄藩を中心にしての見方が支配的だったが、1980~90年代以降、幕府朝廷・朝敵諸藩に関する研究が進み、勝者側である薩長中心の王政復古史観に批判が加えられ、より大局的に幕末を考える視点へと研究の主軸が移ってきた。 その中で非常に重視されるようになった幕末の勢力に一橋慶喜・会津松平容保・桑名松平定敬による「一会桑」がある。近年では大河ドラマでも当たり前のように使われているし、概ね一般的になってきているのではないだろうか。近年の主流となりつつある「一会桑」を提唱したのが書の著者家近良樹教授で、その「一会桑」とやはり再評価されてきた孝明天皇の朝廷の動きを中心に据えて幕末政治史を捉え直したのが書である。2002年に新書として発売されたものに改訂が加えられて2014年に講談社学術文庫から再発売された。 武力倒幕を目指す西南

    「江戸幕府崩壊 孝明天皇と『一会桑』」家近 良樹 著
    kamayan
    kamayan 2015/04/12
  • 「人種主義の歴史」ジョージ・M・フレドリクソン 著

    「人種主義(Racism:レイシズム)」は歴史上どのような過程を経て登場してきたのか?西洋における人種主義の歴史と全体像を丁寧に描いた一冊。 「人種主義」は現代においては「外国人嫌悪(Xenophobia:ゼノフォビア、クセフォビア)」とともに表面化してくることが多いが、歴史的には、古代から様々な民族集団・共同体で見られる「外国人嫌悪」や「自民族(自文化)中心主義(Ethnocentrism:エスノセントリズム)」と「人種主義」の登場とは直接の関係は見られない。 フレドリクソンは、「人種主義」の起源を十五世紀のスペインに求めている。宗教的寛容と多文化共存が両立した中世スペイン社会はペストの流行に基づく社会不安や市場経済の進展による既存秩序の動揺、イスラーム勢力との対外戦争、統一国家の建設を背景とした国威発揚など様々な要因からユダヤ教徒を「血の浄化」という血統主義に基づく差別・排除を行う「宗

    「人種主義の歴史」ジョージ・M・フレドリクソン 著
    kamayan
    kamayan 2015/04/09
  • ケープ植民地から南アフリカ連邦成立までの歴史まとめ | Call of History ー歴史の呼び声ー

    アパルトヘイト体制成立に至る南アフリカ史の簡単なまとめで、とりあえず1910年の南アフリカ連邦の成立までを大まかに。 オランダ領ケープ植民地十五世紀末まで南アフリカはヨーロッパと隔絶された地であったが、1497年ヴァスコ・ダ・ガマが喜望峰経由でのインド航路を開拓すると、まずポルトガルが、続いて十六世紀末までに欧州諸国が相次いでアジアへと進出する。南アフリカは航海の難所であったため補給地としてそれほど重視されていなかったが、十七世紀に入り、スペインとオランダとの海上覇権争いが熾烈なものとなると、オランダ東インド会社(VOC)は南アフリカに中継拠点を築くことを考え、1652年、ヤン・ファン・リーベックによってケープ半島とテーブル湾一帯に植民地(オランダ領ケープ植民地)が築かれた。 当初のVOCの目的は現地民との交易で船舶の水・糧や薪等を調達することだったが、周辺のコイコイ人部族にはそのニーズ

    ケープ植民地から南アフリカ連邦成立までの歴史まとめ | Call of History ー歴史の呼び声ー
    kamayan
    kamayan 2015/04/09
  • 十二世紀南九州の覇者「阿多忠景」について

    元木泰雄編「保元・平治の乱と平氏の栄華 (中世の人物 京・鎌倉の時代編 第一巻)」で十二世紀に薩摩を中心に南九州一帯を支配した阿多忠景について詳しく書かれていて、名前はうっすら聞いたことがあるけど・・・程度の認識だったこともあって同書の『栗林文夫「阿多忠景と源為朝――その伝説と実像」』から簡単に紹介。 阿多忠景(生没年不詳)は桓武平氏の流れをくむ薩摩平氏の一流で十二世紀初頭から1160年頃にかけて、薩摩一国を自身の直接統治下に置き、さらに彼に従う豪族たちを通じて大隅・日向も傘下におき南九州三カ国を支配したという南九州の覇者である。また、保元物語にある九州の惣追捕史を自称し源為義に追われて九州に下ってきた源為朝に娘を嫁がせてその後ろ盾となった「アワノ平四郎忠景」と同一人物と考えられ、琉球まで影響力を及ぼしていたと言われていることもあり、後の為朝征琉伝説にも影響があったという。 彼が拠地とし

    十二世紀南九州の覇者「阿多忠景」について
    kamayan
    kamayan 2015/03/24
  • 「シャーマニズム(「知の再発見」双書)」C・ステパノフ&T・サルコンヌ著

    シャーマニズムがよくわからない。いくつかの宗教学の入門書の知識と、例えば琉球・南西諸島のユタ、東北のイタコ、卑弥呼などに代表されるような古代の巫女、アメリカ・インディアン、アフリカの呪術師、アボリジニ、ブードゥーなどを想起した一般的なイメージを持っている程度なので、最近(2014年)出たばかりのコンパクトなシャルル・ステパノフ&ティエリー・サルコンヌ著「シャーマニズム(「知の再発見」双書)」というを読んでみたが、よりわからなくなった。 シャーマニズムとはなにか。「平凡社 世界宗教大事典(1991年)」にはこうある。 『通常、トランスのような異常心理状態において超自然的存在(神霊、精霊、死霊など)と直接に接触・交流し、この間に予言、託宣、卜占、治病、祭儀などを行う人物(シャーマン)を中心とする呪術・宗教的形態である。』(P851) もう少し端的な説明として、脇平也著「講談社学術文庫 宗教

    「シャーマニズム(「知の再発見」双書)」C・ステパノフ&T・サルコンヌ著
    kamayan
    kamayan 2015/03/09
  • 「フランケンシュタイン」メアリー・シェリー著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

    「フランケンシュタイン(”Frankenstein, or The Modern Prometheus” フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス)」は1818年、英国の女性小説家メアリー・シェリー(1797-1851)によって出版された作品である。メアリーが書を書いたのは1816年19歳のこと、後にロマン主義文学を代表する女性作家の一人となる彼女のデビュー作にして最高傑作とされる。 フランケンシュタインはその名を非常によく知られている。僕は子供の頃に藤子不二雄Ⓐのマンガ・アニメ「怪物くん」に登場する忠実なしもべのフランケンとして知ったのが最初だが、その後もイメージとしての怪物「フランケンシュタイン」に何かと触れてきた。大人になってハマーフィルムの一連の作品やジェームズ・ホエールの初期二作「フランケンシュタイン」「フランケンシュタインの花嫁」なども見て、凶暴なモンスターとしての顔

    「フランケンシュタイン」メアリー・シェリー著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
    kamayan
    kamayan 2015/02/23