アンモニアは、人口が急増し始めた100年前の地球を食糧危機から救いました。工業的な人工合成法が発明された結果、アンモニアを原料とする肥料が大量生産されるようになり、食料の増産につながったのです。そのアンモニアが今、地球温暖化を防ぐ未来エネルギーとして注目されています。 名古屋大学工学研究科の永岡勝俊教授が取り組むのは、再生可能エネルギーであるアンモニアを、より安価にしかも高速で合成するための新たな触媒開発です。学界の通説に対して「それは、本当だろうか」と常に疑問を持ち、新たな仮説の検証を通じて画期的な成果を出してきた永岡教授に、教科書を書き換える可能性のある研究についてうかがいました。 他の研究者がやっていない、つまりチャンスがある ――大学(東京工業大学)時代に所属していた研究室の先生が、アンモニアの大家だったと伺いました。 永岡:その秋鹿研究室に配属されたのが1995年でした。アンモニ