奇跡の復活 ISISなどの攻勢で、カダフィと同じ運命をたどると思われたアサド SANA-REUTERS 19世紀プロセインの軍事戦略家、カール・フォン・クラウゼビッツが名著『戦争論』のなかで言及したことでよく知られる「戦場の霧」(The Fog of War:戦闘における不確定要素)を、われわれは中東ではっきりと目にすることができる。 「アラブの春」がシリアにおよんだ2011年、西欧諸国の政策立案者とアナリストの大半は、バシャル・アサド政権の力を過小評価し、シリア政府軍は早晩敗走するだろうと考えた。アサドがリビアの元指導者ムアマル・カダフィと同じ運命を辿り、憎むべき独裁者として国民に打倒されることになるだろうと予想したのだ。 だがアサド政権には、思いがけないほど多くの味方がいた。イスラム少数派のアラウィー派やキリスト教徒、都市を基盤とするスンニ派などを動員し、生き延びてしまいそうだ。レバノ
化学兵器使用とアメリカの軍事介入への動きによって、日本でも8月下旬からシリア情勢に関する報道が急に増えてきた。しかし、その論調にはおかしなところがいくつもある。 実は筆者は、シリアとはプライベートで長く深く関わってきた。20年前に結婚した元妻がシリア人で、その後、何度もかの国を訪問し、親族や友人を通じてシリア人社会を内側から見てきたのだ。 シリアは北朝鮮と同様の強権体制の独裁国家で、秘密警察が国中に監視網を構築し、不満分子は徹底的に弾圧する恐怖支配が行われている。言論統制も徹底され、もともと外国人記者が自由に取材できるような国ではないうえ、外国人と接する機会のあるシリア人も、秘密警察を恐れて外国人に迂闊にホンネを話すことはない。したがって、なかなかその真の姿が外国人には見えにくい。 筆者のような関わりは希少ケースと言っていいが(シリア人女性と結婚した日本人は筆者が2人目らしい)、そのためシ
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