巻頭言 音声処理特集号に寄せて 小林 哲則 早稲田大学理工学術院情報理工学科教授 PDF ↓概要 概要 人間の耳と口を作る。簡単に言えば,これが音声処理の研究と言ってよい。筆者が音声研究を始めたのは,1980年代初頭である。当時は実時間で話し言葉を認識する装置などは夢の話であった。筑波万博に展示したロボット用に十数個のプロセッサーを並列に動作させ,たどたどしい会話システムをやっとの思いで実現したことが懐かしく思い起こされる。米国DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:米国防総省高等研究計画局)がWallStreet Journalの読み上げを対象として音声認識技術のコンテストを始めたのは1990年代の初めであった。今日の統計的手法に基づく音声認識技術の基礎を成したと考えられるこのプロジェクトも,開始当時は40%程度の音声認識率であった