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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (10)

  • 存在しない書物についての書評集にして、レムの代表作の一つ──『完全な真空』 - 基本読書

    完全な真空 (河出文庫) 作者:スタニスワフ・レム出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2020/01/07メディア: 文庫この『完全な真空』は『ソラリス』のスタニスワフ・レムの代表作のひとつにして、存在しない書物についての書評集である。もともと単行として国書刊行会から1989年に出ていたのだが、今回それがはじめて(河出から)文庫化とあいなった。 僕は数あるレムの著作の中でも書と、存在しない書物への序文だけで構成されている『虚数』を最も愛している。だから、今回『完全な真空』が文庫になったと知った時は大変に嬉しかったものだ。もちろんすでに単行で読んでいるが、この広大な想像力を一冊の中に閉じ込めた、人生の中でも特別な位置を占めるこのような傑作が文庫の形で棚に鎮座している事実は、ひっそりと僕に勇気を与えてくれる。 レムの作品をたとえひとつも読んだことがなかったとしても、このを読めば

    存在しない書物についての書評集にして、レムの代表作の一つ──『完全な真空』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2020/01/21
    おー文庫になったのか。架空の書評といえばボルヘスの短編と『ブッチュくんオール百科』を思い出す。
  • 世界に対する認識そのものが問われる、SF密室ミステリィ──『世界樹の棺』 - 基本読書

    世界樹の棺 (星海社FICTIONS) 作者:筒城 灯士郎,淵゛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/11/17メディア: 単行(ソフトカバー)この『世界樹の館』は、『ビアンカ・オーバーステップ』という作品で衝撃のデビューを飾った筒城灯士郎の最新作である。ビアンカの何が衝撃のデビューだったのかというと、もともと筒井康隆がはじめてライトノベルを書いたという触れ込みの『ビアンカ・オーバースタディ』という作品があった。筒城灯士郎はその続篇を勝手に書いて新人賞に応募してきて、権利面などの困難さはあるものの、それをはねのけるだけのパワーを持った作品であったためにデビューに至ったという経緯があるのである。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp で、実際『ビアンカ〜』って、コメディからシリアスまで縦横無尽にこなし、メタ・パラフィクションであり、能力バトルであり異世界物であり

    世界に対する認識そのものが問われる、SF密室ミステリィ──『世界樹の棺』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2019/12/01
    『ビアンカ・オーバーステップ』の作者の第二作
  • 死者の能力を借用する死霊見師(英国諜報部)vs死者から情報を引き出す死骸検師(ソ連諜報部)の諜報戦!──『ネクロスコープ 死霊見師ハリー・キーオウ』 - 基本読書

    ネクロスコープ 上 (創元推理文庫) 作者: ブライアン・ラムレイ,夏来健次出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/05/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見るネクロスコープというのは何がなんだかよくわからないがそそる書名である。その上、内容をみたら、時代は冷戦下、ソ連の諜報占術開発局に所属する死骸を扱う能力者と英国の諜報機関の霊的諜報戦を描く一大伝奇ホラー! とか書いてあり、そりゃ読まないわけないよね、ってことで読んだわけだけれども、まあおもしろい。 正直展開はかなり冗長で、各種演出もそこまで洗練されているわけではないのだけれども(というか描写と相まってかなり野暮ったい)、それはそれとして死霊見師というアイディア、それが冷戦下の諜報に活かされるシチュエーション、終盤にいたって凄まじい勢いでスケールしていく能力とその魅せ方のおもしろさなど、プラス点もわんさかある作品で、総

    死者の能力を借用する死霊見師(英国諜報部)vs死者から情報を引き出す死骸検師(ソ連諜報部)の諜報戦!──『ネクロスコープ 死霊見師ハリー・キーオウ』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2019/06/02
    見出しだけでこんなにワクワクさせる小説そうそうないぞ
  • 当たり前のこととして人を喰う部族──『人喰い ロックフェラー失踪事件』 - 基本読書

    人喰い (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズIII-8) 作者: カール・ホフマン,奥野克巳,古屋美登里出版社/メーカー: 亜紀書房発売日: 2019/03/21メディア: 単行この商品を含むブログを見るアメリカ合衆国代41代副大統領のネルソン・ロックフェラーの息子、マイケル・ロックフェラーはハーバード大学で民俗学を専攻した後、ニューギニアのほとんど現代人との接触のないまま生活をおくっていたアスマット族に興味を持ち、接触を繰り返すうちに行方不明になった人物である。行方不明は1961年のこと。そもそも名家の子であること、状況は細かい部分までわかっており、大量の金と人員を動員したにも関わらず死体すら見つからなかったことなど、その行方不明になった経緯があまりにも不可解であったこともあって、非常に話題を集めた事件であったようだ。 日でもその調査の記録はミルト・マックリン『首狩りと精霊の島 ロ

    当たり前のこととして人を喰う部族──『人喰い ロックフェラー失踪事件』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2019/04/08
    “それにしても、つい最近(2012年時点でほんの数年前)まで普通に人を喰っていた人間の中でたった一人で滞在するというのは恐ろしいものがある”
  • どうして人間はこんなにも多くの本を破壊するのか──『書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで』 - 基本読書

    書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで 作者: フェルナンド・バエス,八重樫克彦,八重樫由貴子出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2019/02/28メディア: 単行この商品を含むブログを見る 「書物」ではなく「書物の破壊」に注目し、その起源から現代までを700ページ超えの圧巻の物量で概観してみせる凄まじい一冊だ。書物の破壊といっても、災害での消失から、戦争での破壊、思想・心情に反する焚書、虫いまで様々なわけだが、書はその全てを対象とみせる。一度2004年に初版が刊行され、後に好評を受け新版が出ているのだが(邦訳の底はこっち)、そこでは「フィクションの中の書物の破壊」について語る部分まで挿入されており、やりすぎなぐらいにやってくれている。 書物は記憶を神聖化・永続化させる手段である。それだけに今一度、社会の重要な文化遺産の一部として捉え直す必要がある。文

    どうして人間はこんなにも多くの本を破壊するのか──『書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2019/03/10
    『書物を焼いたり図書館を空爆したりするのは、それらが敵対する側のシンボルだからだ』かの読書猿氏も、読書という行為それ自体が当の社会にとって反抗的な行いなのだとツイートしてたなあ。
  • 恒星間宇宙船で起こる密室大量殺人事件──『六つの航跡』 - 基本読書

    六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫) 作者: ムア・ラファティ,加藤直之,渡邊利道,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/11メディア: 文庫この商品を含むブログを見る六つの航跡〈下〉 (創元SF文庫) 作者: ムア・ラファティ,加藤直之,渡邊利道,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/11メディア: 文庫この商品を含むブログを見る宇宙船、それも地球から遠く離れた場所を航行する恒星間宇宙船で起こる殺人事件は、なかなかに乙なものである。電波も途絶え人の行き来もできなくなった雪山や孤島よりも自然に外部との通信途絶、また登場人物の限定が行える(何百光年も離れていれば通信など届きようがないしね)。恒星間宇宙船は殺人にうってつけの舞台だ。 なので、宇宙船という密室状況下で起こる殺人事件を描く作品自体は数多く存在するのだが、このムア・ラファティ『六つの航跡

    恒星間宇宙船で起こる密室大量殺人事件──『六つの航跡』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2018/11/17
    犯人は曹操に一票
  • デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』 - 基本読書

    ランドスケープと夏の定理 (創元日SF叢書) 作者: 高島雄哉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/08/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る書『ランドスケープと夏の定理』は第5回創元SF短編賞を受賞した高島雄哉の、受賞作を端緒とする3編の連作短編集にして、単行のデビュー作になる。その作風を一言でいえばキャラ萌えが追加されたグレッグ・イーガン(いや、イーガン作品のキャラに萌えないってわけじゃないですよ!)、日作家でいうならば小松左京みたいなもんで、ちゃくちゃおもしろい。ぜんぜんデビュー作って感じじゃない。 21世紀後半を舞台に、22歳で教授になった天才物理学者の姉と、姉には及ばないものの優秀な弟が、世界を激変させる知性に関する3つの新しい定理を解き明かしていく──と、ざっくり表現すればそんな話になる。第一作「ランドスケープと夏の定理」では、”すべての

    デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2018/09/03
    SFあんまり読まないけどこれは気になる→“キャラ萌えが追加されたグレッグ・イーガン(いや、イーガン作品のキャラに萌えないってわけじゃないですよ!)、日本作家でいうならば小松左京”
  • 現代の考古学を古代に書かれたものと組み合わせる──『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』 - 基本読書

    先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学 作者: メアリー・セットガスト,山貴光,吉川浩満出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2018/04/08メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る書名からだけではよくわからないだ。『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』というのは、普段ならまず手に取らないだが、先日高野秀行さんと清水克行さんの対談『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』のトークイベントに行ったら、そこで司会をしていたHONZ編集長にオススメされた(編集長も別に読んでいたわけではないが)ので、それなら読まないわけにはいかない。 惚れ惚れするようにあやしい で、読んでみたのだが、これが惚れ惚れするようにあやしいだ。何しろ、内容的にはプラトンの著作の中でも主に『ティマイオス』と『クリティアス』を取り上げてい

    現代の考古学を古代に書かれたものと組み合わせる──『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2018/04/19
    うわー読みてえ!!→"とはいえ──こじつけめいたプラトン擁護や解釈、「少なくともプラトンの記述と矛盾してないよね?(矛盾してないだけ)」的な物言いが連続するのでドン引きはするのだけど"
  • 自分が何を知らないのかを知ることの重要性『知ってるつもり――無知の科学』 - 基本読書

    知ってるつもり 無知の科学 (早川書房) 作者:スティーブン スローマン,フィリップ ファーンバック早川書房Amazon「何かを知っている」と言い切るのは、言葉の定義にもよるだろうが、なかなか難しい話だ。たとえば僕は電子レンジがマイクロ波を照射して水分子を振動させることで温度を上げる機械であることを知っているが、そのより詳しいメカニズムはよく知らないし、ましてや自分で部品から電子レンジをつくりあげることなんかできない。 自分を基準にしてしまって申し訳ないが大抵の人が電子レンジについて知っているのはこの程度のものだろう。人間はけっこう賢いし物知りだが、かといって一人で電子レンジを作り上げられるほど、たった1つのモノのすべての側面に精通するほど知ってはいない。書はそうした”人間の無知”についてのである。われわれはいったいどれほど無知なのか。われわれ無知で愚かな人間はどのように物を考え、どう

    自分が何を知らないのかを知ることの重要性『知ってるつもり――無知の科学』 - 基本読書
    karatte
    karatte 2018/04/15
    もう若い世代には日曜夜に日テレでやってた関口宏MCの番組を知らないのもいるんだろうな……
  • 屍者の帝国(ネタバレなしSIDE) - 基本読書

    いまさら説明するのも野暮なほど有名になってしまった感があるが、今は亡き伊藤計劃が書いた30枚ほどの遺稿『屍者の帝国』をその盟友である円城塔が物語を書き継ぎ、完成させたものが書である。書は出版される敬意そのものが極上の物語であって、物語を読む前に物語が出来上がっていることも話題を盛り上げている一因になっているし、当然読みもそのようなメタ的な情報を含んだものになる。 さてはて実際の出来はといえば、これがまた凄い。プロローグには伊藤計劃が書き残した30ページほどがそのまま使われており、その後に円城塔先生が書いた『屍者の帝国』が続く。文体は「長い物語」を語る方向へ変化しているものの、円城塔らしさもまた残されている(この辺はまたちょっと微妙なんだけどね。後述)。まあ、どんなに消そうとしても現れてしまうものこそがその人固有の文体というものだろう。 元々伊藤計劃先生と円城塔先生の物語の作り方、文体ま

    屍者の帝国(ネタバレなしSIDE) - 基本読書
    karatte
    karatte 2012/08/26
    "元々伊藤計劃先生と円城塔先生の物語の作り方、文体までまるっきり違うのだけれども、少なくとも物語の作り方は伊藤計劃先生の方に合わせている。そしてそれは本作を小説として退屈なものにしていると僕は思う"
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