「アベノミクス」で、世間が踊っている。企業が活動しやすいように規制緩和を進める成長戦略などの3本柱を掲げた安倍政権に、株式市場は活性化。アベノミクスを扱った本もヒットする。だが、メディアであまり論じられない疑問も残されている。いわく、資本主義社会に、〈成長〉は必要不可欠なものなのか? エコノミストの水野和夫さんは、『資本主義という謎』(大澤真幸氏との共著)などで、「20世紀末から、世界は成長なき時代に突入した」という歴史観を世に問うている。 成長、つまり国内総生産(GDP)で計る経済活動の規模は、通常なら年数%ずつ大きくなるのが、近代のいわば常識だった。水野さんによれば、17世紀に始まった西洋型資本主義は、フロンティア(辺境)とコレクション(蒐集〈しゅうしゅう〉)が不可欠だった。欧州諸国は米新大陸やアジア、アフリカのフロンティアを“発見”。石油ほか自然資源を安く調達し、自国の工業製品を高く