ネット・バカ [著]ニコラス・G・カー[掲載]2010年9月12日[評者]森健(ジャーナリスト)■集中できない 考えられない 社内でも家庭でもウェブはいまや必須のツールだ。ツイッターなど新しいサービスを駆使して情報の先端を誇る人たちも多数いる。だが、ウェブで知性が増すかと言えば、そうではないだろう、と疑問を投げかけるのが本書だ。 扇情的な題名だが、本書の真のテーマは脳とウェブの関係性にある。ITに詳しい著者は拙速に結論を急がない。古代ギリシャの音声文化から、15世紀のグーテンベルクの印刷機発明など言語伝達の歴史をたどるとともに、神経科学における脳の認知機能やシナプスの配線の変化についても丁寧に言及。その上で本題に入っていく。 読みどころは中盤以降だ。メールやメッセンジャーなどで思考が中断される弊害をはじめ、ウェブの閲覧を許した講義での学生群と許さなかった講義での学生群での成績の比較(前者が