商船三井所有の貨物船が中国当局に差し押さえられた問題は、1936年に日中の海運会社間で交わされた船舶の賃貸契約をめぐる古い民事争いが発端だ。原告は、中国国内法整備の隙間に生まれた時効の空白を突くことで、戦前の“亡霊”を現代によみがえらせ、強制執行に持ち込んだ。 旧大同海運(現・商船三井)に貨物船2隻を賃貸したのは、陳順通という上海の船舶王の経営した海運会社だ。契約満期前に日中戦争が始まったことで、賃貸中の2隻は旧日本軍に徴用され終戦までに沈没した。 現在の原告は陳順通の孫らで、報道によると、三代にわたり戦前の債権回収に取り組んできた。70年代には東京地裁で訴訟を起こしたものの、「時効」を理由に請求を退けられていた。 ところが、87年1月に施行された中国の民事新法「民法通則」では、同法の施行後2年以内の提訴に限って、最高人民法院(最高裁)が事実上の時効停止を布告。事案は上海海事法院に提訴され