常盤新平『遠いアメリカ』(講談社文庫)を読む。先に読んだ『片隅の人たち』のいわば前編のような連作短編集。「遠いアメリカ」「アル・カポネの父たち」「おふくろとアップル・パイ」「黄色のサマー・ドレス」の4作からなっている。登場人物は共通で翻訳者を志している重吉とその恋人椙枝が中心になる。 重吉は早稲田大学の大学院に籍を置いているがほとんど出席していない。早稲田のアパートでアメリカのペーパーバックに埋もれている。ペーパーバックや雑誌を買いに渋谷の百軒店の奥にある古本屋をしょっちゅう訪ねている。店のおじさんとも親しくなり喫茶店に誘われてコーヒーをおごってもらったりしている。 椙枝は俳優座養成所を出て小さな劇団に所属し、女優の卵として定期的に子供向けの芝居の地方公演に駆り出されている。椙枝を紹介してくれた翻訳者が重吉を可愛がって面倒をみてくれている。 重吉も椙枝もティッシュペーパーがなにか分からない
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