「あの人、今日何色を着てくるかな」 私は一般企業に勤務しているのだが、仕事関係者でいつも真っ白なワンピースや、鮮やかな青のスーツなどを着て、その服装の奇抜さが話題になる女性がいる。ある日、彼女が深紅のワンピースを着て会議に現れた。出席者は度肝を抜かれ、会議はすべて彼女のペースで進められてしまった、ということがあった。 その帰りに、出席者の1人がぽつりと言った。 「赤のパワーに押されちゃったね」 私たちが毎日当たり前のように身につけ、身の回りに溢れている色に、人に威圧感を与えるような力があるのだろうか。 そんな疑問を持った時に手を伸ばしたのが、色の持つ、知られざる様々な力について説明した、野村順一『色の秘密』だ。 黒は白より2倍重い 著者は、建築やインテリア、アパレル、食品などの各業界でカラーコーディネートの指導をした経験を持つ商学博士だ(2004年没)。『カラーマーケティング論』や『誕生色