先入観とは恐ろしいもので、当代随一のハリウッドスター、ブラッド・ピット氏の外見、人格、性格、収入、感性、社会的地位、運動神経、それらひとつひとつの要素を、薄皮を剥がすように注意深く取り除いて丸裸にして比較してみると、僕とほとんど差がないことに気付いてしまった。なぜ、このような検証をするに至ったのかというと昨年からの不妊治療がうまくいっておらず、ふと、養子縁組を思い立ち、養子を育てている著名人として頭に浮かんだのが幸か不幸かブラッド・ピッド氏だったわけだ。丸裸にしてごめんブラピ。 不妊治療に対する不安や焦りがないといえば嘘になる。普段の生活のなかでは表に出さないでいるものの《子供もうダメかも》という重苦しい空気は口には出さずとも僕と妻の頭上に確実に立ち込めていて、たとえば金曜ロードショーで「もののけ姫」をみていても、「シシ神様ですら巨大化するのに…」という僕の不能をぼやく妻の独り言が僕の胸を