■恋愛?友情?友愛? いいえ… 世の中には恋愛や友情や友愛といった言葉があって、誰でも使うことができる。けれど、人と人との関係をじっと見つめるなら、どれも恐ろしいほどに唯一のものであり、本来的には名付けることなどできはしないのだと気づく。 松浦理英子のこの小説に出てくる少女たち、玉藻学園高等部二年四組のクラスメイト〈わたしたち〉は、三人から成る〈ファミリー〉を設定する。疑似家族。その様子を日々眺めて慈しむ。日夏はパパ、真汐はママ、空穂は王子様(子ども)だ。各自が現実に抱える、家族との摩擦や葛藤、苦痛と傷。見えない将来をぼんやりと思い描きながら、少女たちは目の前に展開する現在を抱きしめ、自分なりの方法で愛する。 「日夏は触り方がうまいというか触れられた者が気持ちよくなる触り方をすることは、わたしたちも身をもって知っている」。少女たちの身体的接触に、これほど優雅で安らかなかたちを与えられる作者
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