34年前に酒造りをやめた山口県阿武町の酒蔵が3月、復活する。インテリアデザイナーをしていた33歳の6代目が、先輩杜氏(とうじ)の支援を得て、蔵の代名詞の酒と、家名を冠した新しい酒を、元の蔵で仕込み始める。 島根との県境にほど近く、日本海に面した阿武町。漁港近くの路地に、木造2階建ての古い建物が立つ。「阿武の鶴酒造」の酒蔵だ。細い格子が入った戸に白壁。1915(大正4)年の創業当時の雰囲気が残る。 醸造用のタンクが所狭しと並んだ蔵で「ここもだいぶ散らかっていた」と、三好隆太郎さんは話した。隆太郎さんが生まれた1983年に、祖父の故桂太郎さんは、4代続いた酒造りをやめた。日本酒が売れなくなったためだった。以後、物置のようになっていた蔵を、隆太郎さんが1年かけて片付けた。 父は酒造りの道には進まず、看板商品「阿武の鶴」は、生産を外部委託した。隆太郎さんも東京の大学で建築を学んだ後、大手アパレル会