加地伸行『論語』角川ソフィア文庫 『老子・荘子』が面白かったので、『論語』の入門書も読んでみた。『老子・荘子』に比べると、やや軽さを感じたが、それは孔子が実践性を重んじているからだろう。 著者の加地氏によれば、論語は社会のリーダー(為政者)を育てるための書であるという。では、社会のリーダーはどのような素養が必要なのか? 「すなわち、<深い知識>に加えて、<豊かな道徳性>があること、つまりは<教養人の養成>でした。この教養人であること、それを為政者の条件としたのです。今日、この<為政者>とは各種社会の指導者に相当すると言っていいでしょう」(p.162) いろいろとためになることが書かれているが、印象に残ったのは次の二点。 「子曰く、古の学ぶ者は己の為にし、今の学ぶ者は人の為にす」 (老先生の教え。昔の学徒は、自己を鍛えるために学ぶことに努めていた。今の学徒は、他人から名声を得るために学び努め