久しぶりに書評です。取り上げるのは、鈴木亘『年金は本当にもらえるのか?』(ちくま新書)です。鈴木氏の本書の主な主張点は1)世代間不公平の強調による現行年金制度の不合理性、2)少子化時代における賦課方式の年金運営の問題点、3)基礎年金は全額税方式(消費税)で、厚生年金の所得比例部分は積立方式(賦課方式からの移行)で運営すべし、の三点と受け取りました。 本書は表向き、厚生労働省の年金政策を歯切れよく批判していますが、そこにばかり目を奪われていると鈴木氏の思想の本質を見誤ります。鈴木氏は、本質的には新自由主義であり、小さな政府と社会保障制度の圧縮を意図しており、厚生年金の積立方式への移行は、究極的には厚生年金の民営化をねらっているようです。*1「民でできることは民で」とまでは言っていませんが、発想としてはそれに近い。鈴木氏は、政治家でいえば小泉純一郎に親和性の近い学者先生です。積立方式自体、常識