今年で37回目を迎えた東京国際映画祭を、開幕から毎日、足を運んで取材してきた。その中、どんなに有名な監督、俳優の言葉より強烈なひと言を浴びたと感じ、心に突き刺さったのは、閉幕前日の5日に開催された、エシカル・フィルム賞授賞式での質疑応答だった。 エシカル・フィルム賞とは、映画を通して環境、貧困、差別といった社会問題への意識や多様性への理解を広げることを目的に、23年に新設された。今年の審査委員長には俳優、映画監督に加え、被災地や途上国での移動映画館や撮影現場での託児所プロジェクトを展開する、斎藤工(43)が就任。斎藤と、学生応援団審査委員として大学院生2人、大学生の3人が審査委員会を結成し、ノミネートされた3作品を鑑賞、審査した。 受賞作品に選ばれたのは、ベナン・フランス・セネガル合作映画「ダホメ」。西アフリカのベナン共和国にかつて存在したダホメ王国から、フランスに接収された美術品が返還さ