まるで物語のワンシーンのような 映画やマンガに登場しそうなBARがあります。コンクリート打ちっぱなしの外観は隠れ家的、というか隠れ家そのもの。 その1階にある入口の周辺には目立った看板はなく、扉横に店名が刻印されたプレートがかろうじてあるのみ。 ここにBARがあるということを事前に知らなければ、一見客が偶然に迷い込んでくるということはまずないでしょう。 「ほんとうにここがそうなのか?」 恐る恐る扉を開けると、そこには……あれ、店じゃない? 玄関のような小スペースがあり少し、拍子抜け。 ふう、気を取り直して二枚目の扉を開けると……。 そこには地下のワインセラーを思い起こさせる暗い昏い空間。 木の香とアルコールが混じるアロマも漂っているのでなおさらです。BGMにはヴァイオリンの調べがほのかに流れています。 闇に目を慣らしつつ、左手に目を向けるとバーカウンターの奥に静かにたたずむマスターの秋山哲