梶井基次郎の小説「檸檬(れもん)」で、主人公がレモンを買った店のモデルとして知られる京都市中京区榎木町の果物店「八百卯(やおう)」が、閉店した。 主人公がレモンを画集の上に置く場面に登場した近くの書店「丸善」も2005年に閉店しており、小説の世界をしのぶ場所がまた一つ消えた。 八百卯は1879年(明治12年)創業。1925年(大正14年)に発表された小説では、「私の知っていた範囲で最も好きな店であった。其処(そこ)は決して立派な店ではなかったのだが、果物屋固有の美しさが最も露骨に感ぜられた」と書かれている。 昨年10月に、4代目の村井義弘さん(63)が亡くなり、店を手伝ってきた親族らが閉店を決め、数日前に営業をやめたという。親族の一人は「小説の店として長い間親しんでもらった。ありがとうございました」と話している。