いわゆる「格差社会問題」をとりあげたいくつかの論説を収録。位置的には大竹文雄論説が格差社会論の中心的な視座を与えるものとして位置づけられている。要点は格差は存在するが主な要因は高齢者の増加効果というもの。それと若年層の長期的な失業が「格差」に貢献する。さらに景気回復の初期段階での資産価格の上昇が格差が拡大したという認識をもたらすかもしれない、という指摘。他には当ブログでもとりあげたモリタク論争の一貫としての、格差拡大は規制緩和が原因ではなく不況説というもの。ただし私はすでに書いたが事実上、大竹氏が規制緩和に(不況によりもたらされた)経済格差を緩和する効果を認めていることに懐疑的。ここらへんは拙著(『経済政策を歴史に学ぶ』)を参考されたい。 注目したいのは仲正昌樹氏の事実上の金子勝批判。仲正氏は別の著作『わかりやすさの罠』でも金子氏の二元論的な敵味方レトリックを徹底的に批判しているが、ここで