いわゆる「格差社会問題」をとりあげたいくつかの論説を収録。位置的には大竹文雄論説が格差社会論の中心的な視座を与えるものとして位置づけられている。要点は格差は存在するが主な要因は高齢者の増加効果というもの。それと若年層の長期的な失業が「格差」に貢献する。さらに景気回復の初期段階での資産価格の上昇が格差が拡大したという認識をもたらすかもしれない、という指摘。他には当ブログでもとりあげたモリタク論争の一貫としての、格差拡大は規制緩和が原因ではなく不況説というもの。ただし私はすでに書いたが事実上、大竹氏が規制緩和に(不況によりもたらされた)経済格差を緩和する効果を認めていることに懐疑的。ここらへんは拙著(『経済政策を歴史に学ぶ』)を参考されたい。 注目したいのは仲正昌樹氏の事実上の金子勝批判。仲正氏は別の著作『わかりやすさの罠』でも金子氏の二元論的な敵味方レトリックを徹底的に批判しているが、ここで
ようやくゲット。そういえばみうらじゅんが長澤まさみ嬢たちを論じた秀逸な論説が掲載されている『キネマ旬報』9下も買いそびれた。あと『論座』の先月号の若田部、原田論文も読み逃し 近所の図書館にでも読みに逝こう。いまでている英の『NATURE』は今日ぐらいに手に入れないと。 閑話休題。周回遅れで読みました。大竹さんの議論はよく存じ上げているので、小野先生の発言を中心に今回は注目しました。小野先生の発言要旨は下のようなもので違和感はあまりないものでした。 1 格差感の原因は不況(「働く場があるかないか、格差論は、そこをはっきり区別すべきです」、「でもマクロ的に明らかに不況状況にあるならば。「活力を生むためには格差が当然」なんていう論理には絶対的に反対しなきゃダメです」) 2 中川秀直議員を代表とする自民党主流の雇用流動化・1の論点を無視した格差容認論への批判。ここらは小野先生の民主党へのシンパシー
「格差拡大を引き起こしたのは規制緩和だ」とか 「環境問題を引き起こしたのは大企業だ」とか 「お金がすべてだという風潮を広めたのはホリエモンだ」 という議論はわかりやすいし、自分以外のものに 責任を転嫁できるので心地よい。 私が先日のエントリーで言いたかったのは、 たとえ非合理であっても名目賃金の低下をきらう 一人一人のちょっとした気持ちが、 就職超氷河期を生んだということだ。 そういう既存労働者の気持ちを代表して、 労働組合が賃金引下げを拒むのも自然だ。 そうでないと、労働組合の委員長は組合員から 信任されないだろう。 環境問題だって、誰か特定の悪者がいるわけではなく、 私たち一人一人の行動が環境問題の悪化を引き起こして いる。 私たち一人一人のちょっとした行動が、全体としてみると 知らない間に大きな問題を引き起こしていることが意外に多い。 こうした問題について、「環境問題に気をつけましょ
格差社会に関する関心が高まっている。実際、「全国消費実態調査」によれば1999年から2004年にかけて30歳未満の所得格差が急拡大した。それまでは、将来の所得格差の大きさを表す消費の格差の拡大は観察されていたが、所得格差としては顕在化していなかった。不況の深刻化が、若年層の所得格差を拡大させた。このような若者の所得格差の状況が「下流社会」という言葉が流行語になった背景にある。 若年層における所得格差拡大は、超就職氷河期がもたらしたフリーターと失業の増加によって引き起こされている。それでは、どうして超就職氷河期がもたらされ、それがフリーターの増加につながったのだろう。 最大の理由は、不況がもたらした労働市場における需要の低下である。ただ、需要が低下しただけではフリーターや失業の増加につながらない。賃金が低下す れば、労働需要はそれだけ増えるからである。実際、マクロ統計でみると90年代に下方硬
階級社会 (講談社選書メチエ) 作者: 橋本健二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/09/09メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 57回この商品を含むブログ (36件) を見る 「格差社会」問題における、マルクス主義サイドからの応答だけれども、一連の「格差社会」本のなかでは、頭一つ抜きん出ていると感じた。 橘木俊諮『日本の経済格差』、佐藤俊樹『不平等社会――さよなら総中流』を皮切りに「格差社会」というパースペクティヴが普及して、ご存知のように三浦展『下流社会』のようなヒット商品も生まれたりするわけだが、これら一連の著作を概観してみて、何か総じて微温的な印象を拭えない。例えば、佐藤は「そもそも自分は「格差社会」を否定的に分析しているのではない」と言明して「格差社会」批判のムーヴメントに数えられるのを嫌がっているが、しかし、だからと言って、「格差社会(批判)」
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