炭鉱のボタ山のような盛り上がりが並ぶ風景を、モノトーンを基調に描いた一枚の絵。縦3m×横7mの大作である。近寄ってみると、はかばかしくない何かを暗示しているような空気がみなぎっている。それぞれの盛り上がりは、人が積み重なってできたものであり、みなサラリーマンの格好をして倒れているように見える。作者は現代美術家の会田誠。作品名は「灰色の山」。岐阜市の岐阜県美術館で開催中の「てくてく現代美術世界一周」展に出品されている。 ボタ山のように感じるのが、画家の意図だったかどうかは分からない。しかし、ボタ山を構成する石炭採掘現場の捨て石が“近代日本の遺物”である点を考えれば、あながち的外れの連想とは言えないだろう。折しも、会田の着想を逆方向から確かめるかのように、福岡県の三池炭鉱が、同県の官営八幡製鉄所など他の明治時代の産業関連の遺物とともに世界文化遺産への登録の見通しが立つというニュースが飛び込んで