一八三三年九月二日深夜、二十三歳の若き印刷工の青年ベンジャミン・デイは自宅兼印刷所の作業所で一生懸命新聞を刷っていた。といっても、全くオリジナルの新聞だ。 様々な新聞からかき集めて面白おかしくリライトした事件記事、嘘の企業広告、でっちあげの作り話・・・当時の新聞は上流階級向けのお硬いものしかなく、縦九十センチ×横六十センチの大きさで、価格も六セントと高額なため労働階級は手が出せない。そこで、労働階級向けに娯楽と事件と性に特化したコンパクトで低価格な新聞を出せば、大儲け出来るはずだと考え、それを実行に移したのだった。若くして結婚した妻は二人目を妊娠し、印刷工の仕事は実入りも少なく生活は苦しい・・・その目論見は大当たりだった。瞬く間に、彼の出した新聞「ザ・サン」はニューヨーク一の発行部数を誇るタブロイド紙の草分けとして知られるようになる。 ところで、現在の英国大衆紙「ザ・サン」は1964年に創