一.はじめに 最高裁平成26年10月23日判決(広島中央保健生活協同組合事件)は、妊娠を理由とした軽作業への転換に伴い降格したことは違法であると判示し、いわゆるマタニティ・ハラスメント(マタハラ)に一定の歯止めをかける判決として社会にインパクトを与えました。 これに対して、本判決(福岡地裁小倉支部平成28年4月19日判決、判例時報2311号130頁)は、そもそも労働者から妊娠中の軽易な業務への転換の請求があったにもかかわらず、当初軽減措置が行われず、また、申出の面接の際の管理職の言動がマタハラまたはパワーハラスメント(パワハラ)に該当するか否かが争点となっています。そして本判決は労働者側の請求を認容しています。 二.福岡地裁小倉支部平成28年4月19日判決(一部認容、訴訟後和解) 1.事案の概要 労働者Xは、介護サービス事業者Y1に介護職員として雇用されていた。Xは妊娠したため、平成24年