臓物ちゃん @ItohK4 元エホバの証人2世の乱読家。「萬朶維基(ばんだ・いもと)」名義で小規模に創作中。SF&百合ラブ! よろしく bookmeter.com/users/220854
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赦しへの四つの道 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アーシュラ K ル グィン早川書房Amazonこの『赦しへの四つの道』は、の『闇の左手』などの傑作群が連なる《ハイニッシュ・ユニバース》と呼ばれる世界を舞台にした、ル・グィンによる連作短篇集だ。 原書は1995年の刊行なので待望の邦訳となる。ル・グインの新しい作品を久しぶりに読んだが、政治・宗教・社会と「異星の文化を立体的に立ち上げていく」マクロ的な手腕と、ほんのわずかな動作から人間の差別感情を浮かび上がらせるミクロ的な演出が、やはり異次元レベルにうまい。今回はテーマが奴隷制や女性の権利獲得の物語ということで展開や文体は重苦しいが、SF☓奴隷制テーマではトップクラスのおもしろさを誇るオクテイヴィア・E・バトラーの『キンドレッド』に比肩しうる作品である。 キンドレッド (河出文庫) 作者:オクテイヴィア・E・バトラー河出書房新社Ama
選抜条件自然科学、技術に対する信頼がある。宇宙の広大さ・希薄さに気が遠くなる。宇宙と比べた自分の一生や人類の歴史の短さに唖然となる。人類が地質学的時間の果てにヒトならざるものに進化・退化してしまう。何らかの形でエイリアン・地球外生命体と敵対する。政治的でない。あるいは、政治は扱われるがプロットの邪魔をしない、それどころか面白くしている。または、作者の主張が強くて作者の顔がはっきりと見えることがない。 上記の条件のうち、いくつかを満たしているものを作家ごとに紹介する。 作品のオチには触れないつもりだが、途中に何が出てくるかとかそういったレベルでは作品の内容に触れる。 記憶を頼りに書いているので誤っているかも。 グレッグ・イーガン思い入れが多い。ただ、近年のイーガンの長編は自然科学の素養が無いと何を言っているかまったくわからない作品が多いので(高校どころかひどいのになると大学院レベル)、短篇集
“中つ国”へ最初の一歩を踏み出すあなたへ――トールキン研究家・髙橋 勇氏による「一つの指輪:指輪物語TRPG」入門ガイド ライター:瀬尾亜沙子 ライター:髙橋勇 「指輪物語」の世界を旅するテーブルトークRPG「一つの指輪:指輪物語TRPG」(以下,指輪物語TRPG)の基本ルールブックが,ホビージャパンより2023年9月18日に発売された。価格は7480円(税込)だ。 本作は,1954年に出版されたJ.R.R.トールキンのファンタジー小説「指輪物語」をベースとしたテーブルトークRPGだ。プレイヤーは同作の背景世界である“中つ国”を舞台に,英雄の卵として旅しながら,自らの物語を紡いでいくこととなる。 そして「指輪物語」といえば,今に続く“ファンタジーもの”の原点ともされる大著であり,前日譚にあたる「ホビットの冒険」「シルマリルの物語」などまで含めれば,神話から歴史,そして登場人物の生涯に至るま
大人になると読み方がかわる 『こころ』の K はどのような人間なのか K のような苦学生はたまにいた 夜学校の先生になったのは合理的な判断ではあった 苦労すれば強い人になれる 苦学の世界は二つあった 先生と K の旅行 大人になると読み方がかわる 夏目漱石による小説『こころ』は、名作とされている。 初版本復刻版 こゝろ (岩波文芸書初版本復刻シリーズ) 作者:夏目 漱石岩波書店Amazon 有名な作品なだけに、色々な人が様々なことを書いているが、誰もが否定できないのはとにかく面白く読めてしまうことだろう。『こころ』は新聞連載小説であるため、一日の掲載分の終盤には、次回への期待を煽られるようなことが書かれている。ついつい続きを読みたくなってしまうような構造で、このあたりは職業作家夏目漱石の面目躍如といったところであろう。 ただし漱石の初期作品とは異なり、『こころ』には書きながら考えているよう
人類の知らない言葉 (創元SF文庫) 作者:エディ・ロブソン東京創元社Amazonこの『人類の知らない言葉』はイギリスの作家にして〈ドクター・フー〉などの脚本も手掛けるエディ・ロブソンによる、2022年に刊行されたSFミステリ長篇だ。近未来、テレパシー(思念言語)を用いて会話するロジ人が地球にやってきた世界を舞台とし、ロジ人と人間の通訳を務める女性のリディアを主人公に物語は進行していく。 緒賀岳志さんの装画もよく、装丁が全体的にかっこよかったので(あと、全米図書館協会RUSA賞のSF部門受賞作でもある)そこそこ期待して読み始めたが、これはおもしろかった! なにか具体的に突き抜けた点があるわけではないのだけど、異星人通訳という特殊な仕事の困難さをはじめとしたひとつひとつの描写や演出が丁寧で、作家の素晴らしい技術をみせてもらえたな、と安心して読めるエンタメ作品だ。 世界観、あらすじなど 最初に
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