超伝導転移温度の象徴的な壁が打ち破られ、念願の室温超伝導が実現した。だが、超高圧下という条件がその解析を困難にしている。 ロチェスター大学(米国ニューヨーク州)の超伝導研究室。 Credit: ADAM FENSTER 最高287.7K(約15℃)という極めて高い温度で電気抵抗がゼロになる「謎の材料」が、ロチェスター大学(米国ニューヨーク州)の物理学者Ranga DiasらによってNature 2020年10月15日号373ページで報告された1。超伝導転移温度の記録を大きく塗り替えた今回の成果は、念願の室温超伝導の実現を意味している。しかしながら、この新たな超伝導体には、267GPaという地球の中心部(外核)に相当する極めて高い圧力が必要という重大な欠点がある。また、この材料自体も不明な点が多く、正確な組成すら分かっていないため、すぐに実用化には結び付かないだろう。それでも物理学者たちは、