第二回 メモをとる全盲の女性 物理的には一つの体なのに、実は複数の体を持っている。前回は、障害のある人にしばしば見られる、そんな「ハイブリッドな体」についてお話ししました。いわば、「多重人格」ならぬ「多重身体」。この現象が見られる典型的なケースは、中途障害です。人生の途中で障害を得た人は、現在は障害のある体を生きているとしても、ベースにあるのは、健常者として生きてきた経験の蓄積です。そこに、先天的に障害を持っていた人とは異なる、二重化した体が生まれます。 中途障害は、以前/以後という時間的な境界線が生み出す体の多重化ですが、空間的な境界線によって多重化が生じる場合もあります。つまり体の一部分、たとえば右半分だけ、あるいは下半身だけ、あるいはひざ下だけに障害がある場合です。もちろん、時間的な境界線と空間的な境界線の両方を持っている人もいます。 共通しているのは、どちらの場合でも健常者の