怖い話と民話に関するonboumaruのブックマーク (38)

  • 焼き場の妖異が我をたばかる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 遠きいにしえより、我が朝におきましては。 辻占(つじうら)だの、橋占(はしうら)だの。 そういったものをよく行います。 夜明け前や黄昏時ナド、薄暗く寂しい頃合いに。 四ツ辻や橋のたもとにひとり立ちまして。 行き交う人々の言葉にじっと耳を傾ける。 そうして事の吉兆を占うものでございます。 かの平清盛の娘が身籠ったときも。 母の時子が一条戻橋へ出かけまして。 橋占を行ったトもうします。 そのとき通りかかった童たちの言葉の中に。 「国王」トあったのを耳にいたしますト。 生まれてくる子は天子様になるに違いないト。 大いに安堵いたしたそうでございますが。 これが後の安徳帝なのだから、占いも侮れませんナ。 ところで、どうしてそんなところで占うのかト申しますト。 人通りの繁しい場所は、霊力も強かろうト考えたからで。 人ならぬ霊異が人の口を借りて。 神の意を語り示すトいうのでござい

    焼き場の妖異が我をたばかる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
  • 奥州安達原 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 京の都のさる公卿のお屋敷に。 名を岩手の局ト申す女がおりましたが。 この者は姫君の乳母でございまして。 我が仕える姫君を、それはそれは大事に育てておりました。 ところが、この姫君ト申しますのが。 生まれつき病に冒されておりまして。 五歳になっても一向にものを話しません。 岩手は姫君が不憫で不憫で仕方がない。 そこである時、易者にこれを打ち明けますト。 いつの世も易者ト申しますものは。 無責任な輩ばかりでございますので。 「まだ女の腹の中におるままの、赤子の生き肝をわせるより他にない」 ナドと吹き込んだ。 岩手は姫君が可愛くてなりませんので。 どうしても赤子の生き肝を手に入れたい。 その思いにすっかり取り憑かれてしまいまして。 生まれたばかりの娘を人に預け。 首には赤いお守り袋を掛けてやる。 「母岩手」ト書かれた形見の品。 「かかさまがお

    奥州安達原 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2019/06/14
    謡曲「安達原(黒塚)」より
  • 熱海初島 お初の松の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 伊豆国熱海を、南東の海上へ去ること三里。 名を初島ト申す小島が、沖に浮かんでおりますが。 この島の開闢は、さる姫君の漂着から始まったトカ申します。 その昔、日向国に初木姫ト申す美しい姫がおり。 何の因果かこの島へ流されてまいりまして。 毎晩、無人の島から寂しく対岸を眺めましては。 焚き火を焚いて人の気配を求めておりました。 やがてこれに気づきましたのが。 伊豆山の伊豆山彦ト申す一柱の神。 さっそく姫は萩で筏を組みますト。 いとしい男神に相まみゆるべく。 どんぶらこ、どんぶらこ。 海を渡っていったトいう。 その育てた子らの末裔が。 今の伊豆山権現であるト申します。 さて、この初島の船着き場に。 遠く伊豆山を望むように立つ大きな松がある。 名を「お初の松」ト申しますが。 その由来にはこんな秘話がございます。 初島にまだ人家が六戸しかなかったころ。 そのうちの一軒に娘がひ

    熱海初島 お初の松の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2019/05/24
    伊豆の伝説より
  • 民話の怖い話より 「鬼婆が血となり肉となる」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある山奥の貧しい村に。 竹林に囲まれたぼろ屋がございまして。 老婆と孫娘が二人で暮らしておりましたが。 夜空に月が白く冴えた。 ある秋のことでございます。 高く伸びた竹がゆらゆら揺れる。 竹の葉がさらさら音を立てる。 風がかたかた板戸を鳴らす。 「おばば。寒くて眠られない」 「よしよし。おばばの布団へおいで」 おばばは齢六十で。 孫娘の志乃は十六で。 おばばには倅が三人おりましたが。 この数年で次々と亡くなってしまい。 残されたのはこの志乃ひとりでございます。 ほかに身寄りのないおばばは。 志乃を心底可愛がっておりました。 トハいえ、まだまだ子供と思っておりましても。 世間では十六といえばもはや年頃でございます。 現に、ひとつ夜着の中で身を寄せ合っておりましても。 志乃の体つきが小娘から娘に変わりつつあるのがよく分かる。 「志乃にもそろそろ婿を探してやらねばならんの

    民話の怖い話より 「鬼婆が血となり肉となる」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/10/16
    福井の民話より
  • 苺の六郎、雪の十二郎 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 甲斐国は身延のあたりの山あいに。 母ひとり娘ふたりの女所帯がございました。 父は五年前に亡くなりまして。 母は元々その後添えでございました。 妹娘のお君は今の母の子でございますが。 姉娘のお雪はト申しますト。 これは死んだ前の母が産んだ子でございまして。 世の中に継母と継子の仲ほど面倒なものはございません。 誰しも腹を痛めて産んだ子が可愛いものでございましょう。 前の女が産んだ子など、まるで仇も同然で。 しかも、その父親はもうこの世におりませんので。 「お雪。お前はどうしてそんなにのろいんだよッ。一体、誰に似たんだろうね」 ト、おっかあは何かにつけて姉のお雪を責めますが。 実のところ、真にのろいのは妹のお君のほうでございます。 「おっかあ」 「何だい。お君」 「あたい、苺がべたい」 時は十二月。 外は一面の雪景色。 苺は六月に実をつける。 夏の水菓子でございます。

    苺の六郎、雪の十二郎 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/04/13
    山梨の民話より
  • 姿見の池と一葉の松 恋ヶ窪の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 武蔵国の国分寺のほど近くに。 恋ヶ窪ト申す地がございます。 かの源頼朝公が、鎌倉に拠を構えておりましたころ。 ここに上州と鎌倉を結ぶ街道が通っておりました。 その頃ここはその鎌倉上道の宿場町でございまして。 往時は騎馬の武者や旅の商人などで賑わっており。 茶屋や遊女屋が軒を連ねておりました。 この地には、池がひとつございまして。 付近の湧き水を集めて、深々と湛えておりました。 水は清く、その表は鏡のようにぴんと張り詰めている。 青い空と白い雲が、さながら地を這うように見えたトいう。 その頃は手鏡なんぞあまり身近ではございませんが。 この宿場町には明鏡止水トモ讃えるべき池がある。 畔にはいつでも水を覗き込む遊女たちの姿があり。 このことから、姿見の池ト名がついたのだト申します。 さて、この宿場町の賑わいに。 華を添えた傾城たちのその中に。 名を夙太夫(あさづまだゆ

    姿見の池と一葉の松 恋ヶ窪の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2018/02/05
    東京国分寺の伝説より
  • 蛇女房 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 木曽の山中、人里離れた静かな森に。 木こりが一人住まっておりまして。 枝木を伐って暮らしを立てているトいう。 貧しい山男でございましたが。 与市ト申すこの者は、三十路を過ぎてなお独り身で。 ト申しますのも、早くに二親に死なれてしまい。 父親の商いを、見よう見まねでやってまいりましたので。 もう十幾年も、今日うのに精一杯で。 嫁取りはおろか、人付き合いもろくにしたことがない。 今日も今日とて、形見のナタを腰にぶら下げまして。 通い慣れた獣道を、奥へ奥へト歩み進んで行きますト。 突然、目の前にぱっと広がりますのは。 深い谷ト遠くの山々まで一望する。 崖の上からの景色でございます。 近頃、与市は毎日ここまでやってまいり。 日暮れまでずっと木を伐っておりました。 ここでナタをふるいますト。 カーンカーントいう甲高い音が。 谷底に大きく響きます。 するト、寂しく暮らす与市に

    蛇女房 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/12/25
    岐阜の民話より
  • 民話の怖い話より 「餓鬼憑き ヤビツ峠の落武者と霊」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 長きに渡った戦国の世の、覇者は誰かト問われますト。 それは一も二もなく、徳川様ではございますが。 我々関東者にとりまして、戦国の雄はト申しますト。 それは一も二もなく、相模の北条家でございます。 その北条を最後に滅ぼしたのは、かの太閤秀吉公でございますが。 最も苦しめたのは誰かトなりますト、やはり甲斐の武田でございましょうナ。 城下町まで曲輪(くるわ)でそっくり取り囲んだ総構えは。 北条の居館、小田原城の誇りでございまして。 豊臣の大坂城に先んじ、また遥かに凌いだト申しますが。 これも元はといえば、武田の激しい攻撃に耐えるため。 武田の小田原城攻めを契機に、普請が始まったト申します。 この時、小田原に侵攻した武田の軍でございますが。 三日間だけ城を包囲するト、甲斐へ向けて退却していきました。 これを時の当主氏康の子、氏照と氏邦が待ち伏せ、迎え撃ちまして。 ここに両家

    民話の怖い話より 「餓鬼憑き ヤビツ峠の落武者と霊」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/08/27
    三増峠合戦にまつわる神奈川の伝説より
  • 猫塚鼠塚 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 森森たる木曽の山道、その夕暮れの景。 三十がらみの無口な猟師が一人。 その担え銃にぶら下がるように後を追う童が一人。 そして、その胸に抱かれた三毛が一匹。 二人の親子と一匹のが。 黙って山を下っておりましたが。 「父ちゃん」 「何だ」 「三毛が眠ったようだよ」 「飯をって眠くなったんだろう」 「おら、腹が減った」 「待っていろ。そのうち里に出るはずだ」 が黙っていたのは眠気のため。 親子の場合は疲れと空腹のためでございました。 やがて父の言葉通り、里が見えてくる。 ト、親子の者を見かけて、こちらへ声を掛けてきた村人がある。 「旅のお方かね」 「いや、山向こうの村の者だ」 「へえ。それがどうして」 「獲物を追っていて、日が暮れた。子連れで帰るには遅いから、宿を借りたい」 「それなら、お堂へ泊まるが良い。村の者で夜具やい物を持ち寄ってやるから」 愛想の良さとは

    猫塚鼠塚 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/07/08
    岐阜の民話より
  • 八王子千人同心 蛇姫様 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 武蔵国は多摩郡八王子の地に。 千人同心ト申す集団がございますが。 これは、滅亡した武田家の遺臣たちを家康公が惜しみまして。 甲州口――すなわち甲州武州の境を守らせたのが始まりでございます。 その後は、天下泰平の御世が続いておりますから。 近頃では日光勤番ト申しまして。 東照宮をお守りする役目に就いている。 ひとえに、神君の旧恩に報いんとするものでございましょう。 この者たちの身分は郷士でございます。 侍でありながら、土にまみれて汗を流すという。 半士半農、いわば地侍でございますナ。 十組百人、合わせて千人となることから。 この名がついたト申します。 これらを束ねますのが、その名も千人頭でございまして。 身分は五百石取りの旗格でございます。 甲州街道と陣馬街道の追分に広い屋敷を構えておりますが。 さて、かつてこの屋敷の主人でありましたのが。 萩原頼母(はぎわら たの

    八王子千人同心 蛇姫様 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/03/31
    八王子の伝説より
  • 崖の上の狐とお歯黒婆 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 奥州は八戸のとある在に。 宗介ト申す若い衆がひとり。 呑気に暮らしておりましたが。 ある冬の日のことでございます。 宗介は山一つ越えた向こうの町へ。 物を買い出しに出掛けることにいたしまして。 朝は鶏の鳴く前から起き出しますト。 東の空が白み始める頃には、もう家を出ておりました。 小鳥の囀り、まばゆい木漏れ日。 白い雪がきらきら光るその中を。 宗介はてくてく歩いていく。 お天道さまが頭上に登った頃には。 宗介も峠のてっぺん、崖の上までやってきた。 ふと気づいて頭を上げますト。 何やら行く手の方向から。 ガサガサ、ガサガサと音がする。 見るト、一匹の狐が前足二で。 白い地面を懸命に掘り出している。 鼠の死骸でも嗅ぎつけたものでございましょうか。 あまりに夢中で、こちらの気配に気づいておりません。 宗介は狐に色々と借りがある。 夜中に何度も戸を叩かれて起こされたり。

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    onboumaru 2017/02/23
    青森の民話より
  • 言うなの地蔵 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 とかく世間で疎んじられますのは。 口の軽い男に、尻の軽い女だナドと申しますが。 人様の事ならいざ知らず。 己のことなら喋ってもよかろうト。 そうお考えになるのも分からぬではないが。 やはり、あながち得策トハ申せません。 ここに三太ト申すヤクザ者がございまして。 腕っ節の強い大男でございましたが。 この者はほんの若い時分から。 非常な見栄っ張りでございまして。 都で一旗上げるのだト。 大見得切って村を出ていきましたが。 都の方ではそんな若者ナド。 佃煮にしてなお余るほどにおりますから。 やがて野心も行き詰まる。 どころか、暮らしも立ち行かなくなりまして。 無い袖は振れず。 背に腹もまた代えられません。 三太は一旦故郷へ帰りまして。 身を立て直して都へ戻ろうト考えた。 ところが、国へまだ行き着きもしないうちに。 三太はとうとう一文無しになってしまいまして。 もう三日もも

    言うなの地蔵 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/02/13
    福井の民話より
  • こんな晩 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 よく三歳までは神のうちナドと申しまして。 幼な児はいつ死んでもおかしくないからト。 こう解釈したりいたしますが。 当のところはそればかりが理由ではございません。 まだ前の世で己が何者だったのか。 忘れきっていないからトも申します。 越後国の山あいを流れるとある谷川に。 嘉吉ト申す渡し船の船頭がございました。 この者は貧しいながらも実直でございます。 夜遅くになっても、まだ川に竿を差している。 ――オラがやァー若いときィ 弥彦詣りをしたればなァー ナジョが見つけて寄りなれと言うたども かかあがいたれば返事がならぬ ハァ、ヨシタヤ、ヨシタヤ―― ナドと独り身の寂しさを唄で紛らわせながら。 月明かりだけを頼りにいたしまして。 たまに来る客のために、こちらの岸からあちらの岸へ。 スイーッスイーッと船を渡します。 「こちらは渡し場でございますな」 ト、不意に背後から問いかけ

    こんな晩 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/01/29
    全国に伝わる民話より
  • 江ノ島 稚児ヶ淵の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 源頼朝公の腹心に、文覚(もんがく)という僧侶がございました。 俗名を遠藤盛遠(もりとお)と申しまして。 摂津源氏の... さて、この江ノ島の南端に。 稚児ヶ淵と呼ばれる場所がございますが。 この淵がどうして稚児の名で呼ばれるのか。 これからその由来をお話したいと存じます。 臨済宗の大山として知られる鎌倉の建長寺に。 自休ト申す僧がございました。 もとは奥州、信夫(しのぶ)の里の人でございます。 自休は高徳の僧として、すでに高い評判を得ておりましたが。 あくまでも謙虚な人物でございまして。 いにしえの高僧たちが修行したという江ノ島へ。 百日詣にまいったのでございます。 自休が弁財天を参詣して、島を離れようとしていたその時。 断崖の突端に、ひとりの翁の脇に立つ小さき人影が見えました。 見るト、どこかの寺の稚児のようでございます。 小さき人は、まばゆい夕陽から目をそらす

    江ノ島 稚児ヶ淵の由来 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/01/18
    神奈川の伝説より
  • 神隠し 嬰児と黒髪 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 陸奥国は遠野ト申す地に。 男盛りの猟師が一人おりまして。 名前を嘉兵衛ト申しましたが。 この嘉兵衛が山へ猟に出た時のこと。 一日中、山を歩き回っても獲物は見つからず。 銃の掛け紐が肩に重くめり込みます。 歩き疲れて足はすでに棒のよう。 がっくりうなだれ、山を降り始めたのが薄暮れ時で。 不意に目の前の笹原を撫でるようにして。 風がさらさらト音を立てて、通り過ぎていきました。 嘉兵衛はその風に誘われでもしたように。 何の気なく顔を上げて見ましたが。 その風を向かい撃つかのようにして。 こちらへ向かってくる髪の長い女がひとり。 背中に嬰児(みどりご)をおぶっている。 色の白く、美しい女でございます。 子供を結いつけた襷(たすき)は、藤の蔓。 着物は常の縞模様でございますが。 裾のあたりが尋常でないほどに破れている。 それを、何を思ったのか、木の葉を集めて縫い付けています。

    神隠し 嬰児と黒髪 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/12/26
    柳田國男「遠野物語」中の数篇より翻案
  • 歌い骸骨 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 奥州は遠野郷のある村に。 七兵衛と十兵衛ト申す二人の若者がおりまして。 三年を期日と定めて、江戸へ稼ぎに出かけました。 七兵衛は道楽者の怠け者でございますが。 十兵衛は真面目一徹の働き者でございます。 村にいるときも、七兵衛は遊んでばかりで働こうとしない。 一方の十兵衛は、病気がちの老母を一人で養っておりましたので。 朝から晩まで働き詰めの日々を送っておりました。 それでも弱音ひとつ吐こうとしない。 何もかもが正反対の二人でございます。 また、特段仲が良かったわけでもない。 では、どうしてこんな不釣り合いな二人の者が。 一緒に旅に出ることになったかト申しますト。 ひとえに七兵衛の悪巧みからで。 ある夕暮れ時。 七兵衛は、働き疲れて家路に就く十兵衛に。 不意に近づいてきて、声を掛けた。 実は昼間からずっと待ち伏せていた。 「おお、十兵衛。精が出るな」 「おや、七兵衛か

    歌い骸骨 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/12/04
    岩手ほかの民話より
  • 手っ切りあねさま | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 陸奥国は三戸の御古城近くに。 大層な分限者がおりまして。 サトと申す美しい娘がおりましたが。 この娘の実の母はもうこの世におりません。 後に来た継母はト申しますト。 それはたちの悪い女でして。 いつもサトをいじめておりました。 ある時、父は殿様の御用に従って江戸へ向かう。 以前から継子が憎くてたまらない後でございましたが。 この機を逃してはなるまいト。 悪事を一つ企てました。 近所をうろついていた野良を一匹捕らえますト。 棒で滅多打ちに殴りつけまして。 かわいそうに、殺してしまった。 後はすかさずの遺骸を庭に埋める。 そうして、ひとりで澄ましておりましたが。 やがて、出立から幾月が経ちまして。 父親がようやく江戸から戻ってくる。 するト、後がいかにも嘆かわしそうな表情で。 夫に近づき、告白する。 「あなた、実はサトが――」 「どうした、そんな青い顔をして

    手っ切りあねさま | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/11/14
    青森三戸の民話より。
  • 死に埋め婆の声がする | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 俗に「偕老同穴の契り」ナドと申しまして。 夫婦の仲が睦まじく、固い信義で結ばれていることを指しますが。 「偕(とも)に老い、死しては同じ穴(墓)に入らん」ト。 マ、字句の意味としては、そんなところでございましょうナ。 時々、口説き文句に使う輩もおりますが。 これは気をつけなければなりません。 死して同じ穴に入るためには。 先に死んだ方が、生きている方を待つことになる。 穿った見方と言えばそれまででございますが。 あまり気持ちのよいものではございません。 さてここに、一軒の何の変哲もない百姓家がございまして。 老人とその古女房が住んでおりました。 このふたりがまさに「偕老同穴の契り」を地でゆくような夫婦で。 四十年間、喧嘩一つしたことのない、仲の良い夫婦でございます。 ところが、時というものは残酷なもので。 婆さんのほうが、やがて病の床につく。 爺さんのけなげな看病も

    死に埋め婆の声がする | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/11/03
    長崎の民話より
  • 猫又屋敷 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 昔、周防国に大きな店構えの商家がございまして。 長年、一匹のが住み着いておりましたが。 この家のお内儀(かみ)が、質(たち)の悪い女でございまして。 いつも、このいじめておりました。 嫌いなのかといえば、そうではない。 勝手に住み着いたを、もう五年も飼っている。 朝昼二度の餌もしっかり与えます。 それでは大事にしているのかといえば、そうでもない。 見かけるたびに外へ放り投げたり、蹴飛ばしたり。 酷い時には、焼け火箸で頭を叩いたり。 生かさず殺さず、何かのはけ口にしているとしか思えない。 の方でこの家を出ていかないのにはわけがありまして。 何も、ネズミがたくさんいるからというのではございません。 この家の女中が、を哀れに思っておりまして。 いつも優しく接してくれるからでございました。 そのが、ある日ふっと姿を消しました。 勝手口の脇には、いつもはすぐ空

    猫又屋敷 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/10/25
    各地に伝わる化け猫伝説より
  • 妲己のお百(五)峯吉殺し | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    (芸者美濃屋小さんに変じたお百。追ってきた桑名屋を誘い出して殺す) お百の新しい金づるとなった美濃屋重兵衛でございますが。 旅商人ゆえ、いつも家を留守にしております。 その分、お百は毎日を気楽に過ごしている。 だがそれも、旦那が金を持って帰ればこそ。 留守があまり長く続くと、自分が遊ぶ金がない。 お百は毎日座敷へ出てせっせと稼ごうというような。 殊勝な心がけの女ではございませんので。 そのうちに座敷へも出ず、方々から金を借り。 家にこもって酒ばかり飲むようになった。 時は正月七日頃。 朝から雪がちらほら降っている日で。 お百の小さんはひとり三味線を爪弾きながら。 小唄を唄い、銚子を傾けている。 ト、そこへ――。 「雪はしんしん 夜(よ)もその通り どうせ来まいと真ん中に ひとりころりと膝枕――」 どこからか聞こえてくる門付けの唄い声。 同じく女の声で小唄を唄っております。 病み上がりか、声

    妲己のお百(五)峯吉殺し | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/10/17
    講談「秋田騒動 妲妃のお百」より