怖い話に関するonboumaruのブックマーク (178)

  • 民話の怖い話より 「矢口長者の隠れ里」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 相州は丹沢山地のとある一隅に。 奇妙な名前の沢が集まっている場所がございます。 勝負沢、二十が沢、六百沢、転がし沢――。 これらの名がどのようにしてついたのか。 その由来をこれからお話しようと存じますが。 観応の擾乱――世に言う南北朝の動乱の頃の話でございます。 新田義貞の子に、名を義興ト申す武将がございました。 足利勢に対抗し、上野国にて同志と挙兵いたしました。 一時は首尾よく鎌倉を奪還いたしましたが。 その後は劣勢に立たされまして。 多摩川は矢口の渡しにおいて、主従ともども敵に殺されてしまいました。 さて、この義興の配下に、その名も矢口信吉ト申す武者がおりました。 主君の新田義興を、敵の騙し討ちで失って以来。 信吉はにわかに落ち武者となってしまいまして。 子供と、わずかばかりの家来を伴って。 相州は丹沢の山奥へト、逃げ込んでいきました。 丹沢は相州を甲州および

    民話の怖い話より 「矢口長者の隠れ里」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
    onboumaru
    onboumaru 2016/09/14
    南北朝期の伝説より
  • むくむくと腫れ物に触るよう | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 下総国、臼井の四日市ト申す地へ。 諸国行脚の僧が通りかかりました。 時すでに、夕闇迫る頃となりましたので。 付近の民家に一晩の宿を乞おうト思いまして。 ある家の門をたたきますト。 中から出てきたのは、陰な表情の若い男で。 僧が事情を話して宿を乞いますト。 いかにも迷惑そうな表情で、首を横に振りました。 「申し訳ないが、他をあたってくだされ」 ト、沈んだ声で言うか言わぬかのうちに。 もう戸を閉めようといたします。 「そういうことなら」 ト、僧が立ち去ろうといたしますト。 ふと、思い出したように戸が再び開きまして。 「なるほど。ひょっとすると――」 ナドとつぶやきながら、件の若者が僧を呼び止める。 「お待ちくだされ。かようにむさ苦しいところですが、よろしければ是非」 ト、今度は向こうが乞うような顔つきをする。 こうして、僧は平六左衛門ト申す若人の家に泊まることとなりま

    むくむくと腫れ物に触るよう | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/09/13
    「諸国百物語」より
  • 犬が狐を殺しに来る | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 天竺の話でございます。 お釈迦様が悟りを開かれて間もないころのこと。 舎衛国(しゃえいこく)の波斯匿王(はしのくお... 時に、憎悪というものは、周囲の理解を超えることがございます。 都が奈良にあった頃のこと。 興福寺の僧に、永興禅師ト申す高僧がございました。 当時は紀伊国の熊野に住まい、修行をしておりました。 その頃、近在の村に病の者が一人おりまして。 親族が両手をこすり合わせながら、禅師の住む庵に連れてまいりました。 禅師は快くこれを引き受けまして、祈祷をする。 咒文を唱えますト、たちまちに病は癒えていきました。 病人も親族も、地に額をこすりつけて、感謝する。 そうして立ち去ったかト思うト、いくらも経たぬうちにまた戻ってきた。 禅師はその様子を見て、訝しく思いました。 直してやったはずの病人が、先ほど来た時と同じように苦しんでいる。 「禅師様ならもしやと思い、こ

    犬が狐を殺しに来る | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/09/12
    「日本霊異記」より
  • 旅店の黒妖 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 よく、旅を人生に譬える御仁がございますが。 宿屋はさしずめ、人生の吹き溜まりと申せましょう。 吹き溜まりであるからには、あまり良い物は溜まっていない。 旅立っていくのは、清々しい大志ばかりでございます。 ここに、孟不疑ト申す一人の若者がおりまして。 科挙を受けるべく、長旅をしておりましたが。 昭義ト申す地に至り、土地の旅店に逗留いたしました。 かの国の習俗では、誰もが土足で部屋へ上がります。 とは言え、そこは人間ですから。 足かせをはめっぱなしでは、疲れも癒やされない。 そこで、宿へ着くとまず沓を脱ぎまして。 下女が足をすすいでくれることになっている。 時しも孟が、用意された盥に足を浸しまして。 ホッと一息ついておりますト。 何やらドヤドヤと騒ぎたてながら。 数十人もの一団が入ってきた。 周囲の囁きに耳を傾けますト。 どうやら、姓を張ト申す

    旅店の黒妖 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/09/10
    唐代の伝奇小説「酉陽雑俎」より
  • 妲己のお百(二)桑名屋乗っ取り | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 これから幾回かに分けまして。 「妲己のお百(だっきのおひゃく)」の悪行譚をお話しいたしますが。 今回、お百はまだ出... (大坂の廻船問屋、桑名屋。先代が斬った海坊主の怨霊が、十数年の時を経て甦る) 大坂に雑魚場(ざこば)ト申す、生魚の市場がございまして。 問屋は軒を連ねており、仲買人も溢れんばかりの賑わいで。 江戸で申せば、まず日橋魚河岸といったような土地でございます。 この雑魚場の外れに、新助と申す棒手振りの魚屋がございました。 棒手振りを生業トする者は、お得意先がなければなりません。 たらいに生魚を載せて、天秤棒で担ぎますので。 あてどなく歩いていては、あっという間に魚が腐ってしまいます。 ところがこの新助には、お得意というものがまだございません。 その日も、取り敢えず腐らぬうちに売りさばこうト。 あっちへこっちへ、盤台を担いで走り回っておりましたが。 ちょ

    妲己のお百(二)桑名屋乗っ取り | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/09/07
    講談「妲己のお百」より
  • 踊る猫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある山奥に、貧相な荒れ寺がございました。 住職は腰の曲がったヨボヨボの爺さんで。 もうこの年では気力も体力もございませんので。 昼夜なくうとうとトばかりしております。 これではあまりに頼りがないト。 檀家にも一軒二軒と逃げられまして。 檀家がなければ、寺はえません。 明日の身も知れぬ貧乏寺と成り果てておりました。 ここに、この山寺から唯一逃げ出さなかったものがございまして。 名をトラと申す、これまた年老いたが一匹、住み着いておりましたが。 やはり気力や体力の衰えからでございましょうか。 和尚同様、日がな一日、居眠りばかりして暮らしておりました。 和尚にとっても、長年の相棒でございますが。 近頃、悩みができましたのは。 寺がえなければ、和尚もえぬ。 和尚がえなければ、わせることもできません。 かと言って、そこらに捨てるわけにもいかない。 和尚は悩みに悩

    踊る猫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/09/05
    民話「猫檀家」より
  • 呪い人形 針千本 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 伴山ト申す僧がございまして。 諸国を旅しておりましたが。 ある時、下総は須賀山ト申す地を、通りかかった時のことでございます。 四町ほど続く石垣が目に入ってまいりましたが。 そのほとんどが崩れかかっておりまして。 すみれ野原に、器のかけらが散らばっている。 どうやら、古い屋敷の跡らしく思われました。 その傍らに八十に近い老人が、火鉢にあたりながら藁を編んでおりました。 草の庵を結んで暮らしている様子でございます。 伴山が、上総への道筋を聞きがてら、 「ここはどちら様のお屋敷の跡でしょうかな」 ト、尋ねますト。 老人は、煙草の煙をくゆらせながら。 ゆっくりと語りだしたのでございます。 昔、ここは高塚沖之進ト申す武士の屋敷でございました。 高塚家は代々、この地の領主でございまして。 沖之進は隣国の姫君を奥方に迎え、つつがなく暮らしておりました。 その時、奥方はまだ二十一

    呪い人形 針千本 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/09/04
    井原西鶴「懐硯」より
  • 鬼の手 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 とある地に、鹿や猪の猟を生業とする兄弟がございました。 いつも二人で山に入り、「待ち」ト呼ばれる手法で猟を行っておりました。 離れた二の高い木の股に、長く頑丈な横木を渡しまして。 その上に二人が並んで立ち、下を通る獲物を弓で狙うというもので。 九月も下旬となったある晩のこと。 見上げれば夜空に月はなく、見下ろせば眼下に闇が広がっている。 静まり返った森のなかで、兄弟は鹿のやって来る音に耳を澄ましておりました。 二人を長い静寂が包んでいる。 「おかしい――」 ト、まず兄がそっとつぶやいた。 「――今夜に限って、獲物が来ない」 弟はそれを聞いて、一つ息をつきますト。 「母者人が一人寂しく待っております。空手で帰るわけにはまいりますまい――」 ト、深い憂いを湛えた声音で言いました。 兄は何も返さない。 再び、静寂が二人の間に流れます。 鹿の忍

    鬼の手 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/29
    「今昔物語集」より
  • 崖から突き落とした男 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 唐の貞元年間のこと。 河朔の地に、李生ト申す少年が住んでおりました。 李生は地方官吏の家に生まれまして。 それなりに学問もあるはずではございましたが。 どこをどう踏み誤りましたものか。 幼い頃からすこぶる素行が悪く、親からも見放されておりました。 十四、五の頃には、すでにならず者の一味に加わっておりまして。 すぐに仲間とも喧嘩別れをし、盗賊の真似事をしてひとりで暮らしておりました。 貧しい身なりをして、馬を乗りこなし。 弓矢を手に携えて、旅人をおびやかす。 そんな少年の姿に、人々は畏怖と好奇の眼差しを向けまして。 密かに「石窟小賊」と綽名しておりました。 さて、そんなある日のこと。 根城としている岩山の断崖を、李生が馬で進んでおりますト。 向こうから同じ断崖の道を、馬に乗って悠然ト向かってくる者がある。 年の頃は、李生と同じ十五、

    崖から突き落とした男 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/18
    唐代の伝奇小説「宣室志」より
  • 妲己のお百(一)海坊主斬り | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    そも、妲己のお百とは何者かト申しますト。 殷王朝最後の王たる、紂王(ちゅうおう)の治世に。 妲己ト申す絶世の美女がございましたが。 これは同時に稀代の悪女でもございました。 唐土(もろこし)の三代悪女のひとりに数えられているほどでございまして。 俗に「酒池肉林」なる言葉がございますが。 これは、この女の贅沢三昧を揶揄して生まれたものでございます。 その妲己をも凌ぐ悪女であるということから。 不名誉にもその名を冠せられましたのが。 我が日のにおける毒婦の総裁、悪女の元締め。 妲己のお百ト申す、実にけしからぬ女でございます。 ご承知の通り、出羽秋田藩は、佐竹侯の御領地でございますが。 そのお抱えの御用船頭に、桑名徳蔵ト申す者がございました。 御用船の雷電丸に、領主佐竹家の米を積み込みまして。 大坂中之島の佐竹家蔵屋敷へ運びこむのが役目でございます。 ある年の十月十日に、徳蔵はお預かりした米を

    妲己のお百(一)海坊主斬り | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/17
    講談「秋田騒動 妲己のお百」より
  • 佐渡の八百比丘尼 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ご承知の通り、佐渡はいにしえより流刑の地でございます。 古くは順徳天皇、日蓮上人、能役者の世阿弥など。 様々な人物がこの島に流されてまいりましたが。 徳川様の御代となってからは、もっぱら町方の罪人の終焉地トなっている。 終焉地トはどういうことかと申しますト。 この地に流されたが最後、生きて帰ることはまずありえません。 まずは瓢箪責めという慣例から始まりますが。 これは、己の股ぐらに頭を突っ込むような形をとらせまして。 その形のまま、縄で厳重に縛り付けられるトいうもので。 この責め苦には、どんな悪人でも悲鳴を上げて、苦しがります。 中には、この時点で息絶えてしまう者もいる。 やっとのことで解放されますト。 実はここからが番で。 三年三月の苦役を勤め上げれば、晴れてお赦しトなりますが。 まず、満期を迎えられる者がおりません。 針山のような鉱山を、裸足で歩き回らせられま

    佐渡の八百比丘尼 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/13
    全国に流布する八百比丘尼伝説より
  • 犬と女房とその娘 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 昔、摂津国兵庫のあたりに、長七ト申す者がございました。 大坂から酒を取り寄せて、商いをしておりました。 長七は近頃、二親を立て続けに亡くしまして。 当人はト申しますト、四十を過ぎてもいまだ独り身でございますから。 突然、天涯孤独の身トなってしまった。 商売にせわしなく立ち回っているトは申しましても。 寂しいものはやはり寂しいものですので。 いれば慰みにでもなろうかト。 雌犬を一匹買い求めて、飼うことにいたしました。 矮狗(べいか)トいう小型の犬種でございまして。 そこらの野良犬とはわけが違う。 そもそもが愛玩用に掛け合わされたものでございますから。 姿かたち、しぐさなど、どこをとっても愛くるしくできている。 長七もすっかり心を奪われてしまいまして。 殊の外、この犬を可愛がります。 様々な芸を仕込んでみたり。 夜には懐に抱いて共に寝たり。 朝夕には己の器に餌を盛って

    犬と女房とその娘 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/11
    「平仮名本 因果物語」より
  • 近江の女のいきすだま | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ある時、京から美濃、さらに尾張へ向かおうとしている下臈がおりました。 下臈――すなわち、当今で言う町人、あるいは下男のようなものでございますナ。 元々は明け方に京を出るつもりでございましたが。 どうしたことか、何やら胸騒ぎがして落ち着きませんので。 夜のうちに家を発っていきました。 夜寒の中、息を白くしながら。 とある辻までやってきますト。 大路に人の気配がある。 見るト、青みがかった衣を着た女が、一人で立っておりました。 この夜更けですから、まさか一人ではあるまい。 同行の男がどこか近くにいるのだろう、ト思いまして。 下臈も何気なく脇を通りすぎようトした。 ト、不意に女が下臈に声を掛ける。 「あの、どちらへ参られますか――」 その声が何か妙に消え入るような調子でございましたので。 下臈は、ふと女のほうを振り返りますト。 身なりはそれなり

    近江の女のいきすだま | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/10
    「今昔物語」より
  • 井戸の底に棲む女妖 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 我が日のでは、都が奈良にあった頃のことでございます。 金陵の地に、陳仲躬(ちん ちゅうきゅう)ト申す者がございました。 富裕な家庭に育ちまして、また生来の学問好きでございます。 千金の金を携え、洛陽へ遊学に行きました。 洛陽に着きますト、清化里という地に一人で住まい始めました。 この家には大きな井戸がございました。 以前から、人が落ちて溺れることが、よくあったそうでございますが。 仲躬は学問にのめり込むあまり、外へ出ることもございませんでしたので。 全くこのことを気にせずに過ごしておりました。 それから月日が流れまして。 ある時、隣家の十歳ばかりの女の子が、この井戸に落ちてしまいました。 毎日水を汲みに来ていた娘でございましたが。 ふとしたはずみで落下し、亡くなったとのことでございました。 井戸は深く、家内の者が総出で井戸浚いをいたしまし

    井戸の底に棲む女妖 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/09
    唐代の伝奇小説「博異志」より。
  • お岩出生譚 重助殺し | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 江戸麹町に中田屋ト申す店がございまして。 そこに、伝蔵ト申す篤実者の奉公人がございました。 真面目な男ですので、主人も非常に目にかけて、かわいがっておりましたが。 篤実者だからト、色気がないかト申せば、そんなことはございません。 いつしか、主人の娘、おみつと深い仲になってしまった。 しかも間の悪いことには、おみつがやがて伝蔵の胤を宿してしまいまして。 追い詰められた二人は、以前奉公していた吉兵衛という男を頼っていく。 吉兵衛から見れば無分別な二人ではございますが。 そこは旧主の娘御とその情人でございますから。 二人の代わりに、中田屋の主人に詫びを入れに行ってやりました。 ところが、父親は事態のゆゆしきことを知って、すでに激怒している。 「七度転生しようと、もう親子ではない。二度と帰参は許さぬ」 ト、まるで取り付く島もない。 ところが、母親の方は、これはやはり大事な娘

    お岩出生譚 重助殺し | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/08
    講談「重助殺し」より
  • 大歳の火 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある山深い村に若い夫婦がおりまして。 夫の母親と三人で、同じ屋根の下に暮らしておりました。 ある冬のこと。 大歳(おおどし)、つまり大晦日の晩のことでございます。 外はしんしんと雪が降っている。 三人はこの年最後の事を終えて、囲炉裏にあたっておりました。 嫁は何だかそわそわとする。 自分でもよく分かりませんが、今日に限って心が落ち着きません。 ちらりと姑の方を見る。 いつにもまして、険しい表情で囲炉裏の火を見つめておりました。 囲炉裏の火越しに見えたその姿が。 炎に包まれたようにゆらゆらと揺れている。 嫁はふっと魅入られたような心持ちになった。 「これからは、お前が火種を守らなければならねえ」 姑が炎を見つめたまま、嫁に言いました。 嫁はどきっとして、夫の方に思わず目をやる。 夫は、安心させようと、深く頷いてくれました。 ト、二人の視線を遮るように、姑が冷たく言い

    大歳の火 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/05
    長野ほかの民話より
  • 宇佐八幡の鉄輪女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 豊前国の宇佐八幡宮ト申しますト。 日各地の八幡宮の総社でございますが。 そこから半里ほど北へ行ったところに墓地がございまして。 そこへ夜な夜な、変化(へんげ)のものが現れるという噂が囁かれておりました。 曰く、頭頂から八方へ火を噴くのである。 曰く、墓地の陰気が満ち満ちて、妖物と化したものである。 ところが、こういった話の常といえばそうでございますが。 噂を聞いた者はあまたおりましても。 実際に自分の目で確かめた者が、出てきて語ることはそうございません。 ある晩、若い衆が数人寄り集まりまして。 常のごとく酒を酌み交わしながら、戯れておりましたが。 その時に、この噂が格好の肴として、座に上がりまして。 「どうだ。これからひとつ、噂の真偽を確かめに行ってみないか」 ト、言い出す者が現れましたが。 こういう時は、言い出しっぺが手を挙げなければならない。 さもなくば、誰

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    onboumaru 2016/08/04
    「諸国百物語」より
  • 阿弥陀仏よや おおい、おおい | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 讃岐国は多度郡のとある里に、源太夫ト申す者がおりました。 この男の気性の猛々しいことを譬えますト。 常に鼻から火焔を噴き出しているかの如きでございまして。 この男の生業(なりわい)はト申しますト。 他に何が出来ましょう――殺生をして暮らしているのでございます。 毎日、朝から晩まで、山に入っては鹿や鳥を射(い)殺し。 海や川に入っては銛で魚を突き殺す。 ただそれだけならば、これは猟師漁師の類でございますが。 この男の殺生は、生きとし生けるもの全てに及びますので。 人の首を斬り、手足を折らぬ日はないという有様でございます。 里の者は、みなこの悪人を心底恐れておりました。 ギューッと引き絞った矢が、獣の土手っ腹にズブリと突き刺さる音。 瞬時にパッと吹き出す鮮血の赤い霧の色。 手探りで差し込んだ銛が、魚を捉えた手応え。 たちまち赤く濁る水のおもて

    阿弥陀仏よや おおい、おおい | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/08/02
    「今昔物語集」より。芥川龍之介「往生絵巻」の原拠。
  • 目玉を食う鳥 羅刹鳥 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 ある大家(たいけ)の倅がを娶ることになりました。 新婦の実家も非常な大家でございまして。 すこぶる釣り合いのとれた良い縁談でございました。 新婦は駕篭(かご)に乗る。 大勢の供が馬に乗って付き従う。 いやはや、祭りの行列のような壮麗さでございます。 そのお練りの一行が長い道のりを経まして。 ある古い塚の前を通り過ぎました時。 不意に一陣の風があたり一面に吹き渡りました。 竜巻がたちまち砂塵を巻き上げる。 ぐるぐるト、新婦の周囲を幾重にも巡ります。 供の者たちは、砂に目をやられて、のたうち回る。 その間に、嵐は徐々に鎮まりました。 目を開けてみますト、幸いに駕篭は無事でしたので。 一行は不思議に思いつつも、再び出発する。 どうにかこうにか、新郎の家に辿り着きました。 ト、駕篭を庭先に下ろしたところで、事は起きた。 下女が簾を上げて、新婦を駕篭

    目玉を食う鳥 羅刹鳥 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/07/29
    清代の志怪小説「子不語」より
  • 大岡政談 白子屋お熊 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 享保の頃。 日橋新材木町に軒を連ねる材木問屋のうちの一軒に。 白子屋という大店がございました。 この店に、江戸中で評判の美人がおりましたが。 それが、名をお熊ト申す、一家の一人娘でございます。 年はこの時、二十三でございました。 大店の一人娘で、かつ大層な美人ときておりますから。 誰が白子屋の富とお熊の美貌を一手に収めるのか。 つまり、誰が白子屋の婿養子に収まるのかト。 そんな話題が、長らく江戸中を賑わせておりました。 それが、五年前、お熊十八の年に決着がつきまして。 白子屋の婿として迎えられたのは、又四郎ト申す地味な四十男でございます。 さて、この白子屋の身代が大きく傾いたことがございましたが。 それがほかでもなく、又四郎が婿入りする前後のことでございました。 お熊にはまるで姉妹のようだと評される母親がおりました。 名をお常ト申し、年は四十を過ぎておりますが。

    大岡政談 白子屋お熊 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/07/27
    「大岡仁政録」より