怖い話に関するonboumaruのブックマーク (178)

  • キジも鳴かずば | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 信州は犀川のほとりに貧しい村がございます。 周囲を急峻な崖に囲まれた谷間に、岩がゴロゴロ転がっている。 その中を激流が駆け抜けていくような土地柄で。 この犀川というのが、また困り者の川でございまして。 岩山を無理に削りながら流れてくるので、川幅が狭い。 大雨などが降りますと、すぐに氾濫して辺りの人家を呑み込みます。 この地が貧しいのも、耕す田畑を容易に持てないためでございます。 さて、この犀川の谷に久米路橋という橋がかかっておりましたが。 その橋のたもとに、仁平という百姓が住んでおりました。 名主からの額ほどの痩せた田をあてがわれた小作人です。 女房を亡くし、幼い娘のお菊と二人で慎ましやかに暮らしておりました。 朝、仁平が野良へ出ていきますト。 まだ七つのお菊が椀を洗い、掃除、洗濯をする。 家の中の仕事がだいたい片付きますト。 母が遺した毬を取り出して、一人で外で

    キジも鳴かずば | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
    onboumaru
    onboumaru 2016/06/29
    長野の民話より
  • 怪談牡丹燈籠 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 根津の清水谷に、田畑と借家を持ち、その実入りで暮らしている浪人がございました。 名を萩原新三郎と申します。 年はまだ二十一と若く、おまけに男振りもすこぶる良いという。 二月の初めのある日のこと。 新三郎の家に山志丈と申す幇間(ほうかん)が遊びに参りました。 表看板は医者ですが、医術のイの字も知りません。 金づるのもとを巡回しては、お座敷でご機嫌を取るという。 いわゆる太鼓持ちというやつですナ。 これを一名、幇間医者(たいこいしゃ)ト呼ぶ。 「あなた。そう毎日閉じこもって、々と書見ばかりしていたら、せっかくの男振りがすたれます。今日はお天気がようがすから、一つ亀戸の臥竜梅でも見に行きましょう」 などト言って連れだしますが、実のところは自分が事にありつきたいというのが心で。 こうして新三郎は梅見に駆りだされることになりましたが。 その帰りに志丈が連れて立ち寄った

    怪談牡丹燈籠 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/28
    三遊亭圓朝作「怪談牡丹燈籠」より
  • 天竺の僧伽多と鬼ヶ島の女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 これは天竺の話でございます。 遠い外つ国(とつくに)の話ですから、いつのことだかは分かりませんが。 天竺に「僧伽多(そうきゃた)」と申す者がございました。 名を僧伽多と申すのであって、別に僧侶ではございません。 おそらく大商人か船乗り、もしくは国の交易を担う王の臣下だったかと思われます。 さて、僧伽多は五百人の商人を船に乗せますト。 金銀財宝を得るべく、外国の港へ向かっておりました。 ところがその途中、にわかに嵐が吹き始めまして。 さしもの大船もまるで木の葉のよう。 南へ南へと、どんどん吹き流されてしまいました。 やがてたどり着きましたのは、見知らぬ島で。 ひとまずは命が助かったことを喜び合いながら、一同は陸に上がる。 しばらく休んでおりますト、どこからか人の声が聞こえてきた。 振り返るト、女が十人ほど、歌を歌いながら通り過ぎていく。 どことも知れぬ孤島に流れ着き、

    天竺の僧伽多と鬼ヶ島の女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/27
    「宇治拾遺物語」より
  • 貧者と菊の姉弟 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 世の中には極端な人間がございまして。 金に生き、金に埋もれて死んでいくような守銭奴があるかと思いますト。 その反対に、清貧の暮らしに並々ならぬこだわりを持つ者もある。 ここに馬子才と申す人物がございまして。 この者は人並み外れた菊好きでございます。 菊の花を愛でるがあまり、数十年来、清貧の暮らしを守り続けているトいう変わり者で。 どういうことかト申しますト。 子才が菊の花の魅力に取り憑かれているのは、その高貴さゆえでございます。 菊の花の美しさをうっとりと眺めるにつけ、世俗の出来事が穢らわしく思えてくる。 先祖伝来の広い土地に、小さなあばら家が遺されておりましたが。 子才はそこに籠もって、ひっそりと暮らしておりました。 それが、こと菊の花となりますト、これは一種の物狂いでございます。 どこそこにどんな品種のものがある、ナドと耳にいたしますト、

    貧者と菊の姉弟 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/26
    「聊斎志異」より。太宰治「清貧譚」の原拠。
  • 道成寺 安珍と清姫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 紀州の道成寺(どうじょうじ)は古いお寺でございます。 大宝元年の創建ト申しますから、奈良の都より歴史は古い。 この由緒ある道成寺に、かつて曰くつきの鐘がございまして。 二度に渡る消失により、残念ながら今は残っておりません。 二度目の消失は、信長の焼き討ちによるものでございますが。 一度目は何が原因かと申しますト。 それが、これからお話する安珍清姫の物語でございます。 醍醐天皇の御代、遠く奥州より毎年、熊野権現に詣でる山伏がおりました。 名を安珍(あんちん)と申し、若くまた優れた美貌の持ち主として知られておりました。 道成寺はその熊野への途次にございまして。 寺の近くに、真砂の庄司ト申す者が住んでおりました。 庄司には可愛らしい娘が一人おります。 それが、名を清姫(きよひめ)と申す幼な子で。 安珍はこの庄司の家を、毎年、宿にしておりました。 ですから、清姫のことは小さ

    道成寺 安珍と清姫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/24
    謡曲「道成寺」より
  • 逆さ吊りの女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある家のが所用のため、数日の間、一人で里帰りをしましたが。 これはその用を終えてまた婚家へ戻る途中の話でございます。 名をおせいと申しまして、年は二十五でございました。 実家と婚家の間は女の足で半日掛かるほど離れておりまして。 普段は夫や弟が送ってくれるのですが、この日に限ってみな忙しい。 薄暗い竹藪を一人で通る頃には、もう日が暮れかかっておりました。 ト、そんな女を待っていたかのように、脇から突然現れた男がある。 これが当の藪から棒で、おせいは思わず悲鳴を上げた。 長い髪に髭も剃らず、袖なしの薄汚い着物を着た、見るからに山賊体の大男です。 男はおせいの細腕をむんずと掴むと、無理矢理に引っ張っていこうとする。 大声で助けを呼びますが、静まり返った竹藪に虚しく響くばかりです。 じたばたと抵抗していると、男が振り返って諭すように言った。 「何も取っておうと言うわけ

    逆さ吊りの女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/23
    鹿児島 喜界島の民話より
  • 山中の魑魅 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 よく魑魅魍魎ナドと申しますが。 実は魑魅と魍魎は別物であることを、ほとんどの方はご存知ないようで。 かく言うわたくしも、つい今しがた知りましたが。 魑魅は山の怪、魍魎は河の怪を指すそうでございます。 更に申せば、魑は虎の姿を借りた山の精霊。 魅は猪の頭に人の胴体をした、沢の精霊が原義だそうで。 いずれにしましても、山には陰陽の気が籠もっておりますから。 その気に乱れが生じますト、これら魑魅となって怪をなすのだそうでございます。 さて、お話は天正五年のこと。 松永久秀と申す武将が、かつて足利将軍を影で操っておりましたが。 その後、織田信長の軍門に一旦降りながら、この年になって謀反を起こしました。 その配下に小石伊兵衛尉と申す勇者がございまして。 今まさにこの者が、河内国片岡城に籠城しております。 ところが松永勢は劣勢、信長軍は勢い盛んに押し寄せてくる。 小石はもはやこ

    山中の魑魅 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/22
    浅井了意「御伽婢子」より
  • 死美人の匂い | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 大江定基(おおえのさだもと)と申す男がございました。 文才に恵まれ、将来も嘱望されておりましたが、ケチのつき始めは女でございます。 ある時、とある若い女と知り合うや、すっかり魅入られてしまいまして。 ちょうどその折、三河守に任じられますト、を離縁し、この女を連れて赴任しました。 元のがそんなに悪だったのかと申すト、そういうわけではございません。 それなりの家柄の娘で、品も良く、また性質も穏やかでございます。 年をとっているのかト申せばそんなこともなく、どちらかと言えば若い方で。 器量が劣るのかト申せば、やはり人並み以上の美人です。 では、新しい女のどこがそんなに良かったのかと申しますト。 これは一種の女妖でございます。 顔立ちは美しいというより、愛らしいといった方が的確で。 どこか幼く、チョット見るとまだ子どものようでございます。

    死美人の匂い | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/21
    「宇治拾遺物語」より
  • 犬の墓 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 御存知の通り、かの国の歴史は夏(か)王朝から始まりますが。 この「夏」という字はどういう意味かと申しますト。 おおよそ、「盛んである」とか「中心」というような意味だそうでございます。 後に、「華」の字がこれに取って代わるわけでございますが。 ところで、「中心」があるからには「周縁」もあるわけでございまして。 かの国では、それら周縁のまつろわぬ民を、東夷西戎南蛮北狄ナドと申します。 我が日のは東夷(とうい)でございますナ。 三国志中の魏志に東夷伝という項があり、さらにその一条として倭人伝がございます。 もっとも、我々は自分がエビスだなどとは思っておりませんが。 このまつろわぬ民の中でも、殊に強大であったのが、西戎(せいじゅう)、北狄(ほくてき)で。 大群で馬を駆っては高原を自在に闊歩し、時にはこの「夏」「華」の領域を侵すほどでございました。

    犬の墓 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/20
    唐代の伝奇小説「宣室志」
  • 江島屋怪談 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 芝神明宮の近くに、江島屋と申す古着屋が暖簾を掛けておりました。 古着屋と申しますが、蔵まで持っているような、大店でございます。 ト申しますのも、婚礼の晴れ着や弔いの喪服などというものは、値は張りますが毎日着るようなものじゃない。 一生に何度着るか分からないようなもののために、そうそう大金ははたけません。 そこで、繁盛するのが古着屋で。 ろくに着られないうちに古くなった着物を買い集め、町人相手に安く売る。 古着とはいえ、元は上物ですから見栄えは良い。 町人などは必要な時が来たら、こういったもので間に合わせます。 お侍でもサンピン――イヤ、未だご栄達に縁のない方や、ご浪人なども、こうした古着屋で羽織袴を調達されるそうですが。 ところが、当に繁盛している古着屋というのは、何もこれだけでっているわけではない。 俗に「イカモノ」と申しますが、縫いの甘い粗悪品を、それら上物

    江島屋怪談 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/19
    三遊亭圓朝作「鏡ヶ池操松影(通称:江島屋騒動)」より
  • 民話の怖い話より 「十六人谷」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 世に深山幽谷ナドと申しますが。 日の第一と申しますト、やはり越中富山の黒部一帯でございましょう。 飛騨の峰々を、斧で真っ二つに切り裂いたような深い谷。 そのあまりの険しさゆえか、辺りの山は立ち入り自体が一つの禁忌でございます。 今でも、加賀の奥山廻りのお役人と、その他には近在の杣人――木樵ですナ。 これらを除きましては、山へ入ることが許されておりません。 黒部に限らず、山には掟というものがございまして。 まず、山の神というのは女でございますから、これに嫌われてはなりません。 よく女人禁制などと申しますのも、元はこれが理由の一つです。 神とはいえ女ですから、どうしてもそこは嫉妬深い。 また、山中で見聞きしたことは、決して他言してはなりません。 これも古くからの戒めとして、よく知られるところでございます。 雪女や鶴女房が、自身の素性を頑なに隠したがりますが。 あれも、

    民話の怖い話より 「十六人谷」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/17
    富山の民話より
  • 京女の生首 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 京の都に一人の若い僧侶がございました。 名を西念と申します。 実はこの西念、寺に入る前に一人の女と情を通じておりました。 当然、受戒して僧となった以上、女とは手を切るのが道理でございますが。 西念は意志が弱かったのか、さてまた煩悩が強かったのか。 いまだに夜ごと寺を抜けだしては、女と密かに逢瀬を重ねております。 ところが、この密通が露見する前に、二人の仲は自然と引き裂かれることとなりました。 ト申しますのも、師僧の命により、西念は東国の檀林へ送られることになったのでございます。 つまり、学問所で修行をしてきなさいトいうわけですナ。 西念は女が愛しい、名残惜しい。 どうしても別れたくはございません。 ト言って、己は修行の身。 師僧の命に背くわけにもまいりません。 しばらく西念は女には知らせず、ひとり悲嘆の日々を過ごしておりましたが。 時は人を待ってはくれませんので、や

    京女の生首 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/16
    「新御伽婢子」より
  • 仏教説話の怖い話より 「湛慶阿闍梨と殺した女」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 文徳天皇の御代に、湛慶阿闍梨(たんけい あじゃり)と申す僧がおりました。 この人はかの慈覚大師円仁の弟子でございます。 師の慈覚大師は、伝教大師最澄の高弟として知られております。 その慈覚大師の高弟と申すのですから、この湛慶もまた高僧に違いありません。 真言を極め、また国内外の書物、さらには諸芸にも広く通じておりました。 中でも湛慶は、加持祈祷を能くしました。 そのため、帝はもとより、様々な貴人から厚く信頼を寄せられておりました。 当時、飛ぶ鳥も落とす勢いだった藤原良房公が病に倒れた折も、この湛慶が召されて祈祷を行ったのでございます。 さて、湛慶の祈祷の験がさっそくありまして、良房公の病も快癒いたしました。 湛慶が控えの間で帰り支度をしておりますと、若い女房が現れました。 女房と言ってもかみさんではございません。 宮中や大邸宅の女中でござ

    仏教説話の怖い話より 「湛慶阿闍梨と殺した女」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/15
    「今昔物語」より
  • 女侠と乳飲み子 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 唐の貞元年間と申しますから、我が日ので言うならば、平安の都が開かれたばかりの頃でございましょう。 崔慎思と申す者が、科挙に合格し、晴れて進士となりました。 この進士と申すのは、六科ある科挙の中でも最難関でございます。 よく、七十を過ぎてようやく合格した、などという逸話がございますが。 たいていは四十歳前後で合格するのが普通だったようでございます。 この崔慎思もご多分に漏れませんで、もう四十に手が届かんといった年格好でございます。 これまで勉強詰めで暮らしてまいりましたのが、ようやく報われましたので。 栄誉に思う一方、羽根を伸ばしたい気持ちも何処かにございます。 あれやこれや、見てみたいもの、やってみたいことが、たくさんある。 ところが、崔は田舎の人でございます。 都に知人も親類もなければ、住む家すらない。 まずは身の置き所から探

    女侠と乳飲み子 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/14
    唐代の伝奇小説「原化記」より
  • 餓鬼阿弥蘇生譚 小栗判官と照手姫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 有名な小栗判官(おぐりほうがん)の蘇生譚でございます。 時は足利将軍の時代。 二条大納言兼家卿の嫡子、後の小栗判官は、毘沙門天の申し子と呼ばれておりました。 どういうことかト申しますト。 子に恵まれない兼家卿が、鞍馬の毘沙門天に祈願して授かったのが、小栗判官でございます。 判官は七歳の時に勉学のために比叡山へ送られまして。 十八歳の時には、東山第一と呼ばれるほどの秀才に成長いたしました。 そこで、父君に呼び戻されまして、官位と屋敷を授かりました。 さて、父君は館の主となった小栗に御台(みだい)を迎えてやろうと考えまして。 さまざまな家柄の姫を会わせますが、小栗は全く興味を示さない。 「背が高すぎる、髪が長すぎる、顔が赤すぎる」 ト、もったいない御仁があったもので。 なんと、七十二人の姫にあれこれ難癖をつけて、送り返してしまいました。 それだけでも父君の面目は潰された

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    onboumaru 2016/06/14
    説経節「をぐり」より
  • 小鮒のせいしょう | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 昔、出羽国は仙北郡のとある小川に、名を「せいしょう」と申す小鮒が一匹住んでおりました。 この沢には他にも鮒がたくさん住まっておりましたが。 中でもこのせいしょうは、誰もが眉をひそめるほどの大らいで。 何故、眉をひそめるかと申しますト。 餌をたくさんべるだけなら他にもおりますが。 せいしょうはただ大らいなだけでない。 他人の餌まで奪ってう。 それでは、そんなにいつも腹が減っているのかと申しますト。 腹が減るからうのではない。 そこにい物があると、残らず平らげてしまいたくなる欲望に駆られる。 まさに欲の塊、欲の泉のような男――イヤ、鮒でございます。 前世は餓鬼道にいたのではないか、ト言いたくなるような浅ましさで。 もっとも、畜生道もあまり褒められたものではございませんが。 鮒というのはそもそも雑でございます。 水草から虫まで、川の中にあるものは大抵う。

    小鮒のせいしょう | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/12
    出羽の民話より
  • 亡者が女の首をねじる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 これはとある高僧が、まだほんの小僧さんだった頃に体験された話でございます。 仮に名を西念とでもしておきましょうか。 この西念さんは、当時、西国のとある禅寺で、和尚について修行しておりました。 ある日、近くに屋敷を構える武士の倅がやってまいりまして、和尚に申しますことには。 「実はこのたび、父が病で亡くなりました。あまり大きな声では申せませんが、その病といい、死に様といい、少し尋常でないところがございまして。和尚様直々に読経をしていただきたく、参った次第でございます」 尋常でない、という物言いに、幼い西念さんは大いに震えたと申します。 ところが、師の和尚は全く動じることなく、「分かりました」と頷いた。 「我が寺でも選りすぐりの僧を、十二名連れてまいることにいたしましょう」 この時、西念さんは恐ろしくもあり、嬉しくもあったと申しますが。 それは、選りすぐりの十二名の中に

    亡者が女の首をねじる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/10
    「善悪因果集」より
  • 女屋敷の天井の穴 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ある貴人の家に、若年ながら容姿麗しく、また人柄も凛々しいご子息がございました。 当時の人々は、「近衛の中将ではないか」と噂したそうですから、マ、そのようにしておきましょう。 さて、この中将がある時、かの清水(きよみず)を参拝いたしました。 ト、毎度お定まりで恐縮ではございますが――。 やはりこういう時は、偶然美しい女を見かけるようにできております。 私もたまにはそんな目にあってみたいものでございますナ。 市女笠に隠れて顔ははっきり見えませんが、そのお召し物の華やかなことと言ったらございません。 中将も「これはきっと然るべき身分の方が、お忍びで参られたものに違いない」と考えた。 女がふと顔を上げたすきに、中将が覗き見る。 年の頃は二十歳ばかりでございましょうか。 まだあどけなく、とても可愛らしい顔立ちをしております。 中将はすっかり心を奪わ

    女屋敷の天井の穴 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/09
    「今昔物語」より
  • 笑う女 嬰寧 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 王子服と申す、将来を嘱望された若者がございました。 父はなく、母一人子一人という家で、溺愛されて暮らしております。 が、優秀な息子なだけに、母もそろそろ嫁を探してやらねばならない。 ある年の元宵節――我が国で言う小正月ですナ。 子服は母方の従兄である呉と申す男に誘われまして。 村はずれまで色とりどりの灯籠を見物しに出かけました。 若い男女が大勢出てまいりましたその中に――。 はっとするような美しい娘が一人おりました。 下女を一人伴って、梅の枝を手にもてあそびながら歩いております。 顔いっぱいにあどけない笑みを湛えている姿は、まさに天女のよう。 子服は思わず見とれてしまいまして、呆然と立ち尽くしておりましたが。 不意に聞こえてきましたのは、その娘の乾いた笑い声で。 「あ、あの人――。あんなにじっとこっちを見て――。ハハハハハ――、ハハハハハ――

    笑う女 嬰寧 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/08
    「聊斎志異」より
  • 野守の鏡 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある春の初めのこと。 出羽国は羽黒山の山伏が、大和の葛城山へ向けて、尾根伝いに修行の旅に出ました。 大和国に入ると、春日という里がございます。 そこに大きな池があるというので、憩いがてら立ち寄ってみることにいたしました。 教えられたとおりに歩いていきますと、やがて広い野原に出ました。 その真ん中にぽっかり穴が空いたように、確かに池がございます。 水面は穏やかで波打つこともまるでなく、水は清く澄みきっております。 まるでよく磨き上げられた鏡のよう。 山伏は池の畔に腰掛けまして、旅の疲れを癒やしておりましたが。 池の水のあまりに清らかなのに心を奪われ、そっと覗いてみますト。 陽の光を受けて、水のおもてはまさに鏡のように輝いている。 身も心も我知らず、いつしか吸い込まれていきそうな心持ちになりました。 ト――。 「もし」 不意に声を掛けられて、山伏はハッと我に返りました。

    野守の鏡 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/07
    世阿弥作の謡曲「野守」より