こんな話がございます。 昔、陸奥国は遠野ト申すところに、三人の兄弟がおりました。 仮に上から、太郎、次郎、三郎トいたしますが。 太郎は四十を超えておりましたが、いまだに独り身でございまして。 長男である手前、顔にこそ出しはしませんでしたが。 内心、このことをひどく気に病んでおりました。 次郎は若いうちに美しい妻を娶りまして。 子宝にも恵まれて、夫婦仲も非常に良い。 本人も、身持ちの固い男でございます。 三郎は兄二人とは年が離れておりまして。 これはまだ三十にもなりませんで、やはり独り身でございます。 ところが、同じ独り身でも長兄の太郎とは意味が違う。 手の施しようのない放蕩者で、相当の浮き名を流している。 挙句に亡き父から勘当されて、友人の家に厄介になっているという。 さて、ある時、長兄の太郎に縁談が舞い込みまして。 太郎さえ良ければ、先方はすでに承諾しているト申します。 しかし、太郎の方