こんな話がございます。 武蔵国は多摩郡八王子の地に。 千人同心ト申す集団がございますが。 これは、滅亡した武田家の遺臣たちを家康公が惜しみまして。 甲州口――すなわち甲州武州の境を守らせたのが始まりでございます。 その後は、天下泰平の御世が続いておりますから。 近頃では日光勤番ト申しまして。 東照宮をお守りする役目に就いている。 ひとえに、神君の旧恩に報いんとするものでございましょう。 この者たちの身分は郷士でございます。 侍でありながら、土にまみれて汗を流すという。 半士半農、いわば地侍でございますナ。 十組百人、合わせて千人となることから。 この名がついたト申します。 これらを束ねますのが、その名も千人頭でございまして。 身分は五百石取りの旗本格でございます。 甲州街道と陣馬街道の追分に広い屋敷を構えておりますが。 さて、かつてこの屋敷の主人でありましたのが。 萩原頼母(はぎわら たの
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