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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (12)

  • 政治家を育てる質問

    12月16日の衆議院選挙投票日。テレビ東京の開票特番「池上彰の総選挙ライブ」を担当しました。 放送中から思わぬ反響をいただき、テレビ東京にはいまも再放送やDVDの発売を求める声が寄せられているそうです。 テレビ東京の人たちはもちろんのこと、外部スタッフが総力を挙げて制作・放送したものですから、当然の評価とはいえ、その一翼を担った私も嬉しく思います。 いつも「いい質問ですね」が口癖の私としては、視聴者に「いい質問ですね」と言ってもらえる内容を目指したからです。 ただ、党首や候補者への私のインタビューは、ジャーナリストとして当然のことをしたまでで、これに関する評価は面映ゆいものがあります。 というのも、たとえばアメリカテレビ政治番組なら、政治家に対しての容赦ない切り込み、突っ込みは当然のことだからです。 日なら「失礼な質問」に当たるようなことでも、平然として質問をしますし、質問を受けた側

  • リビアの「謎」がひとつ解けた

    大震災と原発事故の陰に隠れて、日国内ではあまり報道されませんが、北アフリカ、中東情勢は一段と不透明さを増しています。リビアの反政府勢力を支援するため、NATO(北大西洋条約機構)軍がカダフィ政権の軍を攻撃。これでカダフィ政権が崩壊するかと思いきや、どっこいしぶとく生き延びているからです。 でも、今回の事態がきっかけになって、カダフィ大佐の正体が、少しずつ判明してきました。 カダフィ大佐については、アメリカの駐リビア大使が国務省に送った公電を、内部告発サイト「ウィキーリクス」が暴露して話題になりました。この中でカダフィ大佐について、「官能的な金髪女性」のウクライナ人看護師が常に付き添い、彼女の助けなしには何もできないという趣旨の報告があったからです。 反政府デモが活発になった後、彼女がウクライナに逃げ帰ったという報道もあり、カダフィは遂に彼女にも逃げられたと受け止められました。 ところが、

    リビアの「謎」がひとつ解けた
  • 東電の救済案でよみがえる不良債権の悪夢

    複数の報道によると、東京電力の損害賠償を国が支援する「政府案」が検討されているようだ。それによれば政府が「原発賠償機構」(仮称)を新設し、その資金は交付国債や金融機関からの融資でまかなう。賠償は原則として東電が行なうが、一度に巨額の賠償が発生して資金繰りが困難になった場合は、賠償機構を通じて国の支援を受ける。 この案のポイントは、東電の国有化を避け、企業として存続させたまま国が支援することだ。賠償額は数兆円にのぼると予想されるため、東電は必要な場合は政府に「特別援助」を求め、賠償機構から借り入れや優先株発行で賠償資金を調達する。この資金は東電の利益から長期間かけて返済され、最終的には財政負担は発生しない建前だ。 もう一つ注目されるのは、賠償機構に「将来、原発事故が起きた際の賠償に備える保険機能の役割も果たす」という理由で電力各社が「負担金」を出資することだ。これは実質的に東電の賠償を他の電

    東電の救済案でよみがえる不良債権の悪夢
  • 窓ガラスを割って豊かになることはできない

    東日大震災が日経済に及ぼす影響の全貌はまだわからないが、一つはっきりしていることがある。東北地方で20兆円を越す資産と生産能力が失われ、首都圏では電力不足が向こう数年は続くといわれるなど、深刻な供給不足が起きていることだ。 短期的には、復興需要でGDP(国内総生産)は上がるので、経済成長率はややマイナスになる程度にとどまるだろうという予想が多い。政界には、日銀が国債を大量に引き受けて景気を浮揚させろという意見もある。阪神大震災のあと成長率が上がったことを引き合いに出して「日株は買いだ」とあおる向きもある。しかし、この話はおかしくないだろうか。もし国土を破壊すればするほど成長率が上がるなら、景気をよくするために政府はもっと国土を破壊したほうがいいということになる。 もちろん、これは間違いである。それをたくみに表現したのが、ラリー・サマーズ(元米財務長官)のCNBCでのコメントだ。彼は「

    窓ガラスを割って豊かになることはできない
  • 年金の「運用3号」騒動の原因は専業主婦の年金ただ乗り

    専業主婦の年金をめぐって、国会が紛糾している。サラリーマンのは、年金保険料を払わなくても国民年金を受給できる国民年金の第3号被保険者だが、夫が退職や失業などで厚生年金や共済年金を脱退したときは年金受給資格を失う。この場合は国民保険料を払って第1号被保険者になる必要があるが、それを忘れて受給資格のない人が100万人以上いることが判明した。 そこで昨年3月、こうした主婦が無年金になることを防ぐため、厚生労働省は過去2年分の保険料をさかのぼって払えば受給資格を与える運用3号の創設を決め、昨年12月に実施した。しかしこれでは「まじめに保険料を払った人が損をする」という批判が出てきた。特にこの特例措置が法改正ではなく「課長通知」という法的根拠のない文書によって行われたことが、「国会の承認なしに予算の支出を決める違法行為だ」と問題になっている。 今のところ責任の所在ははっきりしないが、運用3号を決め

    年金の「運用3号」騒動の原因は専業主婦の年金ただ乗り
  • 非正社員を規制すると何が起こるか-日本郵便の「人体実験」

    民主党政権は、製造業の派遣労働を禁止する労働者派遣法の改正案を出すなど、非正社員の規制に熱心だ。その背景には社民党と連携するねらいがあるといわれているが、非正社員を規制すると、彼らは正社員になれるのだろうか。日郵政グループの郵便事業会社(日郵便)で、それを示す「人体実験」が行われた。 民主党も国民新党も社民党も、非正社員を禁止すればみんな正社員になると思っているようだが、そんなことはありえない。企業の人件費は決まっており、正社員のコスト(賃金・年金・退職金など)は非正社員の約2倍なので、規制によって正社員を増やすと雇用できる人数が減り、非正社員が職を失うのだ。 国民新党の亀井静香氏は、鳩山内閣の郵政担当相だったとき、郵政民営化を見直すと同時に「日郵政グループにいる22万人の非正社員のうち、10万人を正社員に登用する」という方針を打ち出した。その結果、正社員募集に応じた非正社員のうち、

    非正社員を規制すると何が起こるか-日本郵便の「人体実験」
  • 「失われた30年」に向かう日本

    1990年代の日経済は「失われた10年」と呼ばれたが、その状況は2000年代になっても変わらず、「失われた20年」といわれるようになった。そして今年は「失われた21年目」だったが、その状況は変わらないまま失われた30年に向かっている。2000~2010年の実質成長率は平均約1%で、G7諸国で最低。政府債務はGDPの約2倍で、同じく最悪だ。今年を振り返って、日が長期低迷を脱却できない理由を考えてみよう。 昨年の総選挙で民主党が政権を取ったとき、「小泉政権の構造改革で日経済がだめになった」と自民党を攻撃したが、民主党政権でさらに経済は悪くなった。失われた20年のうち、2001~6年の小泉政権の時期は経済が持ち直し、いざなぎ景気を超える長期の景気回復が実現した。それが失速したのは、その後の政権で改革が後退し、バラマキ財政に戻ったからだ。 民主党やみんなの党の一部議員には、「日銀の金融緩和が

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  • 「オンデマンド」に進化するテレビを訴訟で妨害するテレビ局

    最高裁は14日、「まねきTV」をめぐる訴訟の口頭弁論を開いた。この訴訟は、テレビ局がまねきTVのサービスを行う永野商店を被告として起こしたもので、一審と二審ではテレビ局側が敗訴したが、最高裁が口頭弁論を開くのは二審判決を変更する場合が多いので、逆転勝訴の可能性が強まってきた。この小さな事件は、今後のネット配信の動向を左右する可能性がある。 まねきTVは、ソニーの「ロケーションフリー」(ロケフリ)を永野商店のオフィスに置き、インターネットで番組を配信する有料サービスだ。ユーザーは海外駐在員が多く、海外で見られない日の番組をインターネット経由で見るためなどに使われている。ところがNHKと民放キー局5社は2006年、これが「放送番組の再送信サービスで著作権法違反だ」として差し止めの仮処分を求める訴訟を東京地裁に起こした。 一審、二審とも原告が敗訴して仮処分申請は棄却されたが、テレビ局はサービス

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    oyoyom
    oyoyom 2010/12/16
  • 租税特別措置をなくせば法人税率は25%に下げられる

    法人税をめぐって、政府と財界の攻防が激化している。政府の税制調査会は、法人税を5%ポイント引き下げる案を軸に検討しているが、これによって税収が1.5兆円ほど減るため、財務省が難色を示している。経済産業省は、租税特別措置(租特)の一部を見直すことで5000億円程度の財源を捻出する案を出しているが、日経団連の米倉弘昌会長は「企業が払う税金が減らないと意味がない。租特をなくすのなら、法人税減税はいらない」と反発している。 これを「均衡財政にこだわる財務省と経済活性化のために闘う経産省・財界」の対立のようにいうメディアもあるが、これは間違いである。それは財界が、なぜ租特の見直しに強硬に反対するのかを考えればわかる。租特は国と地方合わせて648種類もあり、免税による減収額は2009年度で5.9兆円。法人税収は国と地方あわせて9.7兆円だ。租特の対象には住宅ローンや配当所得などもあるが、大部分は法人

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  • 恐ろしいのは円高でもデフレでもない | エコノMIX異論正論 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    14日のロンドン市場では、ついに1ドル=80円台に突入したが、私が資産を運用している大手の外資系銀行のファンドマネジャーからかかってきた電話は「円建て資産を売りませんか」だった。私が「実質実効為替レートでみると、円はまだ安い。この先まだ上がるんじゃありませんか?」というと、彼は「目先は80円を切るかもしれないが、われわれは今が(ドル円の)底値圏とみています」。 名目為替レート(ドル/円 左目盛)と実質実効為替レート(2005年=100 右目盛) それはなぜか、という私の質問に対する彼の答は明快だった。たしかに図のように、インフレ率などを勘案した実質実効レートでみると、今の円相場はここ15年の平均程度だ。しかし彼によれば「それが日経済の実力なんですよ」。名目レートで円が強いように見えるのは、アメリカの物価が15年間に30%以上あがったのに対して、日はほぼゼロだったためで、購買力でみた円の

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  • 政治の「失われた20年」はいつ終わるのか

    民主党の代表選挙に、小沢一郎氏が立候補した。マスコミの評判では「政治とカネ」の問題を抱える彼に否定的な意見が圧倒的だが、ネット上の意見は違う。たとえばロイターの人気投票では小沢氏がややリードしており、ブログなどの記事でも小沢氏を評価する意見が多い。民主党内でも、国会議員票では小沢氏の優勢が伝えられる。 これは実行力のない菅首相に対する批判票と見ることもできるが、剛腕として名高い小沢氏に一度やらせてみたいという「恐いもの見たさ」もあるのではなかろうか。たしかに彼の「壊し屋」としての実績は比類ないものだ。特に1993年に離党して内閣不信任案を出すという荒技で自民党の長期政権を倒し、細川政権をつくった小沢氏の功績は歴史に残るだろう。そのころ小沢氏の政治宣言として出版された『日改造計画』は、次のようなグランドキャニオンについての印象的な記述で始まる: 国立公園の観光地で、多くの人々が訪れるにもか

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  • 「小沢首相」で日本経済はどう変わるか

    民主党の小沢一郎前幹事長が、代表選挙への出馬を表明した。鳩山由紀夫前首相も支持を表明したので、「小沢首相」が実現する可能性は低くない。民主党所属の国会議員は423名だから、過半数は212票。小沢・鳩山グループを合計した基礎票は170~190票あり、羽田グループ(11名)も小沢支持を表明したので、過半数は不可能ではない。これから何が起こるか、簡単なシミュレーションをしてみよう。 代表選の結果、小沢氏が勝った場合、党内はほぼ二分して分裂含みになるだろうが、非小沢系が党を割る可能性は低い。むしろ問題は「政治とカネ」だ。小沢氏の不起訴処分については、検察審査会が再審査しており、「起訴相当」という議決が2度出ると、強制的に起訴しなければならない。しかし憲法では「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」と定めているので、小沢氏が同意しない限り、起訴はできない。しかし国会では

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