国家主義者は、人間社会は国家がなければ成り立たないと信じている。しかしそれは誤りである。社会を律する法も、経済に欠かせない貨幣も、本来は国家(政府)が政治的に作り出すものではなく、民間(市場)で自律的に生み出されるものである。国家が政治的打算に基づき濫造濫発する法律や貨幣は、むしろ社会や経済の秩序を乱す。 評論家の中野剛志は『反・自由貿易論』(新潮新書)で、国家主義のイデオロギーをむき出しにこう書く。「ルールの体系を設計し、担保するのは政治であり、国家です。貨幣、私有財産制度、取引法制など、市場に不可欠なものは全て、国家の政治力がなくてはありえません。市場は、国家の政治力によって形作られているのです」。たいていの人は、法や貨幣は国家が設計し、強制しなければ成り立たないというこの考えを信じていることだろう。だがそれは根拠のない俗説である。 国家による立法が広まったのは近代以降で、人類史におい