国土が狭く人口が過密で、しかも地震の多い国が絶対に手を出してはいけない技術がある。それがプルサーマル(プルトニウムを軽水炉で燃やすこと)と高速増殖炉だ。一まとめて言えば、プルトニウムの平和利用(発電利用)だ。 かく言う私も、20代のころは「夢の高速増殖炉」という名の核燃料サイクルに一時的にでも魅せられてしまった人間です。燃やせば燃やすほど、燃料(プルトニウム)が増えるのである。 若いころの私は、資源エネルギーに乏しい日本にとっては、絶好の燃料がプルトニウムだと思っていた。 けれども、極めて毒性の高いプルトニウムは自然界には存在しない。 自然界の周期表では、原子番号94番だけは空白のままなのだ。 天然ウランの中に含まれるウラン235が核分裂するとき、ウラン235の同位元素ウラン238が中性子を吸収して、この世に存在しない人工の核物質プルトニウム239(原子番号94番)が誕生する。