「これだけ検討したんですから」「対外的にはさほどの影響はないだろう」――1985年8月15日に中曽根康弘首相(以下、肩書きはいずれも当時)が戦後の首相としては初めて靖国神社を公式参拝した際に政府・与党の幹部とみられる人物が発した言葉だ。 これらの言葉は、中曽根氏が国立国会図書館(東京都千代田区)に寄託した大量の文書の中に含まれていた。文書の内容は、講演のための原稿や、政治家や文化人と交わした書簡、メモ書きが入った記者会見の資料など。その中には新聞記者の取材メモをとじ込んだ大量のファイルもあり、中曽根氏自身のものを含めて、大量の政治家の発言が含まれている。いわゆる「オフレコメモ」が公開されるのはきわめて異例だ。 靖国神社への公式参拝については、当初は近隣諸国からの反応をきわめて楽観視。86年以降も公式参拝を続ける意欲を見せていた。だが、実際には中国からの反発が予想外に強く、結局は85年の秋の