コロナ対応で国際社会から対中批判高まる 世界中で中国が新型コロナウイルスの初期対応を誤ったことに対する批判が高まっている。中国の新型コロナウイルス感染症への対応をめぐり、中国の初期対応が後手に回ったこと、および情報開示が十分でなかったことなどから、米国をはじめ各国において中国に対するイメージが悪化しているのだ。そうした中、中国はコロナウイルスの制圧に成功したと喧伝する一方、世界各国に医療物資や医師団を送るいわゆる「マスク外交」を展開し、自国のイメージ回復に躍起になっている。中国国民による使用が禁じられてきたSNS・Twitterを用いて中国外交部報道官が諸外国の世論に働きかけ、さらには習近平国家主席自らが各国首脳に電話攻勢をかけるなど、世界のリーダーとして振舞おうと必死である。 しかし、中国の攻勢は空転し、むしろ世界の反発を買う結果となっている。米国が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と
5月5日現在、香港の感染者は1041人で死者は4人。海外から香港に来た人の中での感染は単発的に数人単位で起きているが、香港内での新規の感染者は16日間ゼロとなっている。香港の人口は約750万人で、市町村という地方都市がないため感染症対策はしやすい。しかし、人口密度が高い上、中国本土と陸続きになっているという事実を勘案すると感染拡大を抑えたと評価できる。 ふくだ・けいじ 東京生まれ。幼少期の頃に医師だった父の仕事の関係でアメリカで育つ。バーモント大学で医師の資格を取得し、カリフォルニア大学バークレー校で公衆衛生の修士号を取得。その後、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)で疫学の専門家としてインフルエンザ局疫学部長を務めたほか、世界保健機関(WHO)の事務局長補などの要職を歴任し、2016年12月から現職。1997年に鳥インフルエンザA(N5N1)が広がった際、CDCのメンバーとして来港した
新型コロナウイルスの脅威は止まるところを知らない。アメリカのジョンホプキンス大学に付属するCSSE(システム科学・技術センター)の「新型コロナウイルス感染マップ」によれば、全世界の感染者は348万人余、死者は25万人に迫っている(5月4日午前3時半現在)。 爆発的な感染は当初のヨーロッパからアメリカに移り、次はアフリカでの発生が大いに危惧される。未整備であろう医療態勢は感染拡大のリスクは大きい。だが、これまでのヨーロッパにおける感染被害に照らすなら、各国・地域における第一波の感染状況と対中関係の濃淡との間に因果関係が推測できるだけに、最近の資源・経済を軸とする中国の浸透・進出ぶりからして、アフリカが危機的状況に陥る可能性を否定する材料は見当たりそうにない。 15世紀半ばから17世紀半ばまで続いた大航海時代の初期、アフリカ南端の喜望峰の沖合を大きく迂回して進んだポルトガル人探検家の目の前に、
批判も覚悟のうえで自ら情報提供 山崎製パン株式会社(ヤマザキ)が3月、一部の角食パンに食品添加物「臭素酸カリウム」を使い始めました。臭素酸カリウムは遺伝毒性発がん物質とされ、添加物批判の記事や書籍等では必ず、猛批判される物質。同社は、臭素酸カリウムを2014年以降は使っていませんでしたが、使用再開です。 しかも、2月25日からはウェブサイトで、自主的に使用再開を情報提供し始めました。法的には、告知する義務はないのに……。 さっそく同社に尋ねました。「発がん物質を食品に使う? 週刊誌などからまた、猛烈にたたかれますよ」。答えは、「もっとおいしいパンを提供するために使いますが、安全は絶対に守ります。詳しく説明しますので、なんでも聞いてください」。 さっそく取材しました。添加物はイヤ、と思う皆さんにこそ読んでもらいたい、科学的根拠に基づく企業の毅然とした判断が、ここにはあります。 食感改善に絶大
豚コレラが発生してからもうすぐ1年。流行拡大は止まりません。 昨年9月9月、岐阜県の養豚農場で確認されたのを皮切りに愛知県、三重県、福井県など計39農場・研究所で感染が確認され、関連農場等も含め1府6県で豚13万頭あまりが処分されています(9月3日現在)。 豚コレラはウイルスが原因となる感染症です。治療法がないため、感染が見つかると豚を殺処分して感染の広がりを食い止めるしかありません。 殺処分は確実に実行されています。しかし、当初は岐阜県内にとどまっていたのが愛知県へ広がり、今年7月に入って三重県、福井県へも拡大しました。万全の防御をしていたはずの愛知県総合農業試験場でも8月、感染が確認され、「全国に広がるのではないか」と養豚関係者の不安は高まっています。 どうして、感染拡大を食い止められないのか? この先、日本の養豚はどうなるのか? 豚コレラは人には感染せず、仮に感染した豚やイノシシの肉
週刊誌の対決に、消費者の反応なし 最近、週刊誌がまたもや、「食が危ない」という記事を量産しています。食の安全取材歴20年近い私としては、周期的にやってくるこの“ブーム”にはもううんざり。今回は、中国産批判を繰り広げる「週刊文春」と、国産が危ないとする「週刊新潮」の対決の様相を示しているのが興味深いところです。 ところが、消費者側の反応がどうもこれまでと異なります。従来だと、食品メーカーのお客様相談室に抗議の電話が鳴り響き、生協にも問い合わせが相次いでいました。今回、企業や生協、業界団体等に尋ねて回ったのですが、抗議はもとより、問い合わせもほとんどなく、あったとしても、週刊誌の書いていることと実態との違いをきちんと説明すると、わかってもらえる、といいます。もちろん、売れ行きにも影響がありません。 なぜ、これまでと異なるのか? どうも複合的な理由があるようです。取材を通じて考えてみました。 「
今年も3月11日が近づいてきました。多大な被害を出した東日本大震災と津波、その後に起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故のきっかけとなった日から7年になります。震災直後に中学生だった子供が成人する程の時間がたちました。しかし、いまだに被災地以外の地域では被災地の安全性に対する誤解が残っています。国もようやく動き始めましたが、こうした誤解を解き、被災地への偏見を将来に残さないために、私たちはどうしたら良いのでしょうか。 東京都民の中で「風化」する震災の記憶 この7年の間には、熊本での大きな地震もあるなど、日本全国で災害が起こっています。その中でも福島のことが比較的長く語られてきた理由には、日本が今まで経験したことが無かった原発事故という災害が含まれていた点が非常に大きかったのであろうと考えられます。 原発事故は一般的な災害と異なり非常に強い政治的な色を帯びたことで、災害当初はさまざまな言
毎月のように、新しい子育て本、教育本が書店に並ぶ。教育熱心な親、子育てに悩む親がそれだけ多いということなのだろう。教育に関してはさまざまな考え方があり、どのような考え方を選ぶかは各家庭の裁量だ。ただ、一つの考え方に固執するよりも、他種多様な手段・方法・考え方を知って選択肢を持っておきたい。正解はないが、結果はあるのが子育て。あなたは親としてどう子どもと向き合いたいだろうか。この連載では、教育関連本を出版した著者の方たちにインタビューしていく。 『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版)の著者は全部で13人。医師や看護師、大学教授、ジャーナリストなど、医療や教育の専門家たちが、自分たちの専門領域から「知っておきたいこと」を平易な言葉で伝えている。2016年の今、ネットの情報は玉石混交だ。インターネットは便利で誰でも情報を発信できる。平等であるがゆえに、専
文部科学省の「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」に所属する若き女性事務官・水鏡瑞希が、卓抜した推理力で次々と研究不正を暴く……。松岡圭祐の小説『水鏡推理』シリーズが売れているらしい。 私も、最新刊の『水鏡推理Ⅲ』まで早々に読んだ。STAP細胞事件をはじめ、最近起きた東京五輪エンブレム騒動や、過去の旧石器発掘事件などをモデルに、痛快な推理小説に仕立てている。 小説なら楽しめるが、現実に起きた不正となるとそうはいかない。2014年のSTAP細胞事件とノバルティス事件は記憶に新しいが、本書によると、これらは氷山の一角に過ぎない。日本は世界に冠たる「研究不正大国」だというのだ。 量だけでなく、質においても世界の注目を集める 研究不正や誤った実験などにより撤回された論文のワースト10に日本人が2人、ワースト30には5人も名を連ねている。他を圧倒するようなワースト1位も、実
水素水ビジネスにのめり込む 伊藤園、パナソニックの「品格」 ウリは「高濃度」 だけど効果は「水分補給」 リウマチ、認知症、パーキンソン病、脳梗塞、メタボ、ED、二日酔い、糖尿病、疲労・肩こり、アレルギー、歯周病、シミ・シワ・美肌――『水素水とサビない身体』(小学館)の帯には、"今わかっている「水素水の健康効果」最新報告"としてこんな病名や症状が並ぶ。本文には、便秘に花粉症、高血圧、ひいては放射線の害やがん、アンチエイジングにも効果ありと夢のような話が続くが、水素水とは何なのか。 きっかけは、著者である日本医科大学の太田成男教授が2007年、有名科学雑誌「ネイチャー・メディシン」に発表した1本の論文だ。水素分子が、生物がエネルギーを作る時に生じるヒドロキシルラジカル等の有害な活性酸素を消去し、スーパーオキシドラジカルなどの有用な活性酸素は消去しないことが培養細胞にて確認されたというものだ。
5月14日、札幌で行われていた日本小児科学会学術集会。「日本におけるヒトパピローマウイルスワクチンの現状と課題」というシンポジウムが行われた第7会場は、外まで立ち見の出る人だかりだった。撮影録音はおろか質疑も禁止という異例の厳戒態勢の中、会場を訪れた多くの医師たちが注目したのは、シンポジストの1人、横田俊平氏だ。 前学会長のプレゼンテーション 横田氏は日本小児科学会の前会長。学会長を務めていたころの横田氏は、ヒブワクチンの早期導入を求めるなど、ワクチンに積極的な小児科医だった。しかし、退官間際の2014年初め、子宮頸がんワクチンが重篤な副反応を引き起こし、「子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS(ハンス)=HPV Vaccine Associated Neuropathic Syndrome)」という新しい症候群が生まれていると主張するグループに加わった。思春期の少女たちに起き
福島の被ばくと子宮頸がんワクチン。この2つのテーマに共通して潜む「支援者」や「カルト化」という問題を、福島出身の社会学者、開沼博さんと、医師・ジャーナリストの村中璃子さんが語り尽くした対談記事はこちら(前篇、後篇)。本記事は対談の内容に関連するコラムです。 「あなたのホテルに送ったから持ってきて」 物流も交通も麻痺した震災直後、福島に住む妻が、東京出張中だった夫に届けて欲しいと求めたのは、ホメオパシーで使う「レメディ」だった。自然治癒力に作用するという砂糖玉だ。 海外の大学で教育を受けた妻は、根っからのナチュラル志向。オーガニック好きで玄米菜食を是とするマクロビオティックを実践し、原則、牛乳と肉は口にしない。思い返せば結婚前から、ヤマザキパンは危険だと食べず、コンビニのサンドイッチを買うとハムをどけていた。 電子レンジを使わず、携帯電話はイヤホンマイク、子供にはテレビも見せなかったという妻
福島の被ばくと子宮頸がんワクチン。弊誌Wedgeが取り上げ続けてきたこの2つのテーマには似通った問題が潜んでいる。福島出身の社会学者、開沼博さんと、医師・ジャーナリストの村中璃子さんが、縦横無尽に語り尽くす。 ※本記事は4月20日発売のWedge5月号の記事の一部です。 編集部 被ばくとワクチンをめぐってどのようなことが起きているのか、実態を教えてください。 開沼博(以下、開沼) 福島の惨事に便乗する言説によって、二次被害と呼べる問題が明確に出てきています。 事故直後の「急性期」には、避難する過程で多くの人が命を落としました。放射線の危険性を過剰に煽る報道によって、農業や漁業に従事する人の中に自殺したり、将来への悲観から廃業したりする人が出ました。 しかし、状況がある程度落ち着いた「慢性期」の現在もそういった惨事便乗型言説による実害は発生し続けている。避難をし続けて、心身に不調を来たして亡
「子宮頸がんワクチン副反応 白血球型影響か」(日本テレビ、2016年3月16日22:18日テレNEWS24) 「子宮頸がんワクチン副反応『脳に障害』 国研究班発表」(TBS、2016年3月16日NEWS23) 「健康障害 患者8割、同じ遺伝子」(毎日新聞、2016年3月17日朝刊) 「子宮頸がんワクチン 脳障害発症の8割で共通の白血球型」(朝日新聞、2016年3月17日朝刊) 「接種副作用で脳障害 8割が同型の遺伝子 子宮頸がんワクチン」(読売新聞、2016年3月20日朝刊) 「記憶障害や学習障害など脳の働きに関する症状を訴えた患者の7~8割は特定の白血球の型を持っていることが分かった」(中日新聞<共同通信配信>、2016年3月17日朝刊) 3月16日以降、こんな報道が続いた。 16日の午後、池田修一・信州大学脳神経内科教授を班長とする「子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確
2014年9月に長野で行われた一般社団法人・日本線維筋痛症学会の“子宮頸がんワクチン”セッションの会場に、医師の姿はまばらだった。大半を占めるのはメディアと被害者連絡会の関係者たち。西岡久寿樹理事長(東京医科大学医学総合研究所)による“HANS(ハンス)”についての説明に頷く記者や涙ぐむ被害者連合会の関係者らしき人たちもいる。しかし、ここから医学的なディスカッションが生じる気配はない。 2006年に誕生した子宮頸がんワクチン。原因ウイルスのHPVを発見したツアハウゼン博士はノーベル賞を受賞している(画像:JOE RAEDLE / GETTY IMAGES) 仮説に仮説を重ねて 「病気」をつくる医師たち HANSとは、14年に入ってから西岡氏らが提唱している「子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群」の略称で、子宮頸がんワクチンを接種した人に起きたと“考えられる”免疫異常を指す。痛みや疲労感
遺伝子組換え食品 海外での “大事件”が報じられない日本(前篇) 「遺伝子組換えトウモロコシに発がん性」? 遺伝子組換え食品について2012年、海外で大きな “事件”がいくつもありました。フランス人研究者によって書かれた「遺伝子組換えトウモロコシに発がん性がある」とする論文をめぐる大騒動、米国カリフォルニア州で行われた表示をめぐる州民投票、米国で遺伝子組換えサケの食品としての認可へ近づいたこと……。 どれも、欧米のマスメディアは大々的に報道しています。今後の遺伝子組換え食品の動向、つまりは、世界の食料情勢を検討するにあたっての重要材料だと思いますが、日本ではほとんど報道されていません。これでは、日本人は井の中の蛙になりかねないではありませんか! 2回にわけてご紹介しましょう。 フランス発 「ついに遺伝子組換えの有害性が明らかに」? まずは、発がん性研究の顛末。フランスCaen大学の分子生物
意外に知られていない 「減塩」のがん予防効果 意外に知られていないのが食塩摂取の問題です。塩辛い食事というと、高血圧や脳卒中リスクを想像しますが、日本人を対象とした大規模な疫学調査で、がんとも密接なかかわりがあることが明らかとなっています。特に、塩辛い干物や塩蔵卵(筋子、たらこなど)を多くとる人はがんリスクが高く、特に、胃がんのリスクは大きくはね上がるのです。 日本人は昔、漬物や干物、塩蔵卵等、塩辛いおかずちょっぴりで、お米をたくさん食べていました。日本人の食塩摂取量は戦前、20gを超えていたとみられています。戦後、減塩運動が盛んになり摂取量は減りましたが、現在でも男性で1日平均11.4g、女性で9.8g食べています(2010年国民健康・栄養調査より)。見かけ上は食塩の平均摂取量は年々減っていますが、これは高齢化に伴って食事を食べる量自体が減っているためで、食事の薄味化は進んでいない、とみ
あなたは、がんを予防するためになにをしていますか? 内閣府が、全国20歳以上3000人を対象に2009年夏に調査を行い、結果を公表しています。第1位は「焦げた部分を避ける」で43.4%でした。 おそらく、まともな医療関係者で「焦げ」をがん対策として重視している人はいないでしょう(理由は後述します)。残念ながら、市民の意識と実際に効果のあるがん予防策には少々、ずれがあるのです。 インターネットを検索すると、「がんを予防する食生活」や「がんに効く食品」も山ほど紹介されています。昨年は、放射性物質を排出しがんを防ぐとして、いくつかの食品がテレビや雑誌などで取り上げられ、ネットにも情報が氾濫しました。が、これらも、科学的根拠を探っていくと、あやふやです。 今回は、科学的に妥当な「がん予防にいい食生活」を考えます。 なぜ、「焦げ」は重視されないか? 焦げの誤解は、40年近く前に全国紙が「焼き魚の焦げ
食品の放射能汚染とフードファディズム 「『普通』の食事、してますか?」 高橋久仁子・群馬大学教授が問う ――東日本大震災、そして福島第一原発の事故が起きてから10カ月が経ちました。4月からは食品の放射性物質に関する規制値が見直されます。食品の専門家である高橋先生のもとにも様々な質問が寄せられたのではないでしょうか。 いくつかの消費者団体などから、「何の食材、どこの産地を避けるべきか」「放射性物質を排出する食べ方はあるか」といった内容の質問がありましたが、私は一貫して「ジタバタせずに、『普通』の食生活を送るべき」と回答しました。食品を避けることは個人の自由だとしても、「放射能を排出する食べ方」は、栄養学的に意味がないからです。 しかし、週刊誌やインターネット上では、幾度となく「放射能を排出する食べ方」が指南されてきました。このような、「ある食材や調理法によって放射性物質が排出される」という考
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