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ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (11)

  •  「科学を語るとはどういうことか」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス) 作者: 須藤靖,伊勢田哲治出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/06/11メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (20件) を見る 書は物理学者須藤靖と科学哲学者伊勢田哲治による科学哲学を巡る対談集である.実際には対談時のやりとりをベースにして,双方が調整しつつ加筆修正を加えており,メリハリの利いたきびきびとした対談に仕上がっている.帯を含めた装丁も大胆で,思わず手に取りたくなるうまい作りだ. 対談にいたる経緯は須藤の「はじめに」と伊勢田の「終わりに」にそれぞれ書かれている.須藤は因果を巡る「あまりにも的外れ」な議論が科学哲学においてなされていることを知り,その後に知り得たことも含めた科学哲学についての批判的な講義を駒場において行う.その講義案を伊勢田がネットを経由して閲覧し,

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  •  「なぜ猫は鏡を見ないか?」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    なぜは鏡を見ないか? 音楽と心の進化史 (NHKブックス) 作者: 伊東乾出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2013/01/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (13件) を見る 書名からは,動物の自己鏡映認知にかかるだと思ってしまいそうだが*1,これは音楽家である著者が音楽質を理解しようと認知科学の力を借りながら知的奮闘してきた探求物語だ.副題には「音楽と心の進化誌」とあるが,特に進化的に何かが深く考察されているわけではない*2. というわけで「自己鏡映認知」的な書名と「進化誌」という単語に釣られて購入し,読み始めた私にとっては内容的には肩すかしのはずだったのだが,しかしこれは読み出したら止まらない,大変面白いだ. まず著者の経歴が型破りだ.著者は中学2年でバルトークの「作曲技法」に入れ込み,FM放送で現代作曲家の松村禎三の「交響曲」を聴いて惹きつ

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  •  「羽」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    羽―進化が生みだした自然の奇跡 作者: ソーアハンソン,Thor Hanson,黒沢令子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2013/04/01メディア: 単行この商品を含むブログ (7件) を見る 書は保全生物学者ソーア・ハンソンによる鳥類の羽についての一般向けのだ.原題は「Feathers: The Evolution of a Natural Miracle 」.書は2012年度のAAAS/スバルサイエンスブックス&フィルム賞(ヤングアダルト部門),2013年度のAMNHのジョン・バロウズメダルを受賞している.訳は鳥類のリサーチャーでもある黒沢令子によるもので手堅く読みやすくかつ安心感がある. 全体の構成としては前半で生物学的にみた羽を扱い,後半では人間社会との関わりがかかれている. 冒頭は地元(北米ワシントン州)でガイドとして参加した探鳥会において,普通種のコマツグミの名前

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  •  「言語が違えば,世界も違って見えるわけ」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    言語が違えば、世界も違って見えるわけ 作者:ガイ ドイッチャーインターシフトAmazon 書は言語学者ガイ・ドイッチャーによる「言語がヒトの思考に影響を与えているか」という問題,いわゆるサピア=ウォーフ仮説の弱いバージョンについてのである.原題は「Through the Language Glass: Why the World Looks Different in Other Languages」 この問題は,私の理解では,以下のような状況だ.最初「言語こそが思考を構成する」というサピア=ウォーフ仮説の強いバージョンが主張され,一部の哲学者や文化相対主義者たちが飛びついたのだが,数々の証拠から否定された.次に「言語は思考に影響を与えている」という弱いバージョンが主張されるようになった.そしてこれについて様々なリサーチが行われ,論争が繰り広げられ,少なくとも何らかの影響があることはほぼ

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  • 「The World Until Yesterday」 第10章 多くの言葉をしゃべる その3  - shorebird 進化心理学中心の書評など

    The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies? 作者: Jared Diamond出版社/メーカー: Allen Lane発売日: 2012/12/31メディア: ハードカバー クリック: 51回この商品を含むブログ (27件) を見る バイリンガルのメリットを整理した後,ダイアモンドは言語の絶滅危惧の話題を取り上げている. <消えゆく言語> バイリンガルにメリットがあるとしても,周りに他言語がなければそれを身につけるのは難しい.ダイアモンドは次に言語の急速な絶滅について議論を進める. 現代は非常に速いペースで言語絶滅が生じている. もちろん過去にも言語絶滅はあったが,現代ではそのスピードが加速しているのだ.ここでダイアモンドは過去の言語絶滅の例としてローマ帝国によるラテン語の覇権や,インドヨ

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  •  「日常の疑問を経済学で考える」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    日常の疑問を経済学で考える 作者: ロバート・H.フランク,Robert H. Frank,月沢李歌子出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2008/02/01メディア: 単行購入: 3人 クリック: 73回この商品を含むブログ (18件) を見る 感情の進化適応的な機能についてコミットメントから考察した名著「オデッセウスの鎖」の著者,経済学者のロバート・フランクの新刊である.フランクは進化心理学的な思考方法を取り入れたをほかにも何冊か出していて,書もとりあえず著者だけ見て購入した次第である. 結論から言うと書は一般人向け,学生向けの経済学の紹介書になっていて,進化心理学的な切り口はところどころに現れているだけだ.経済学書としては,大変わかりやすい日常の疑問から,その裏にある限界コストと限界効用などの経済学的なトピックを考えていこうという取り組みで,ヒトは物語形式の知識が

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  •  「シビリアンの戦争」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき 作者: 三浦瑠麗出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/10/19メディア: 単行購入: 13人 クリック: 615回この商品を含むブログ (17件) を見る 書はある種の戦争開始のメカニズムについてのである.著者の三浦瑠麗は東大農学部卒業後,同じく東大の法学政治学研究科の大学院に進み,2010年に法学博士となるというちょっと変わった経歴を持ち,現在は東大政策ビジョン研究センターの特任研究員という若手研究者だ.書はそれまでの研究成果を生かしたはじめての主著ということで気合いが入ったになっている. 問題意識としては,「これまで関東軍の独走を許した日や多くの軍事政権の暴走の例をふまえて,一般的に『軍部は基的に戦争をしたがり,それを抑えるためにシビリアンコントロールが重要だ』と考えられてきている.しかしイラク戦争を見るとこ

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  •  「天敵なんてこわくない」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    天敵なんてこわくない―虫たちの生き残り戦略 作者: 西田隆義出版社/メーカー: 八坂書房発売日: 2008/06/01メディア: 単行購入: 4人 クリック: 51回この商品を含むブログ (4件) を見る 書は昆虫生態学者の西田隆義による自らの研究物語だ.2008年の出版.八坂書房という小さめの出版会社から出されていたためか当時見逃していたのだが,昨年出版された共立出版の「行動生態学」の捕回避の章で紹介されていたので読んでみた. 著者の最初の問題意識は個体群生態学的なもので,ある生物種の個体数変動を天敵が抑えるという現象はなぜ生じるのかというところから始まる. 数理的にはロトカ=ヴォルテラ方程式のような形で天敵は被者の爆発的増加を抑えることができるし,有名なカナダのタイガにおけるオオヤマネコとカワリウサギのサイクル的な増減の報告もあるのだが,実はこのリサーチはその後の追跡では怪しい

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  •  「進化生態学入門」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化生態学入門 ―数式で見る生物進化― 作者: 山内淳出版社/メーカー: 共立出版発売日: 2012/10/24メディア: 単行購入: 3人 クリック: 72回この商品を含むブログを見る 書は数理生態学者山内淳による進化生態学の入門書.副題は「数式で見る生物進化」とつけられており,適応にかかる進化理論を数式で表現しながら解説していくことが骨格になっている. 題の数式による適応進化理論にはいる前に,まず第1章では「進化に関する基礎知識」が解説されている.普通の解説ではダーウィンから始めるところだが,書ではまず遺伝情報の実体から始めている.歴史的物語から始めるより進化の筋道を基礎から積みあげて説明したいという趣旨だろう.いかにも理論家らしく,その順序には含蓄がある. 具体的には,染色体,DNA,アミノ酸との対応コドン表,タンパク質合成機構,減数分裂,メンデル,連鎖と組換え,主働遺伝子と

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  • 「The Better Angels of Our Nature」スティーヴン・ピンカーとロバート・カプランの対談 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    http://www.ustream.tv/recorded/25752052 このURLにある動画は,最近9月27日にカーネギーカウンシルで両者が対談したものがUstreamで実況されたものの録画だ.(なおこの録画は何故か最初5分半ぐらい延々と対談開始前の風景が流れる) カーネギーカウンシルというのは(今回私も始めて知ったが),鉄鋼王アンドリュー・カーネギー自ら1914年に設立した団体で,おもに国際平和,社会正義,倫理の問題を扱う民間団体ということになる. ロバート・カプランはピンカーと同じくユダヤ系の出身で,国際関係,紛争,防衛問題が専門のジャーナリストだ.著書もたくさんあるが,邦訳されているものとしては「バルカンの亡霊たち」「インド洋圏が世界を動かす――モンスーンが結ぶ躍進国家群はどこへ向かうのか」などがあるようだ. この対談ではピンカーの「The Better Angels of

    「The Better Angels of Our Nature」スティーヴン・ピンカーとロバート・カプランの対談 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  E. O. Wilsonの新刊「The Social Conquest of Earth」についてのRichard Dawkinsによる書評:「The Descent of Edward Wilson」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    E. O. Wilsonは,アリについての世界的権威であり,学問分野の統合を主張する巨人であり,70年代の社会生物学論争の一方の主人公(というか被害者)であるわけだが,最近ではD. S. Wilsonのグループ淘汰理論の論文や,Martin Nowak et al.のNatureに載せられた包括適応度理論をこき下ろす悪名高い論文の共著者になっている.おそらく,これらの論文の主要なところはD. S. WilsonやMartin Nowakの手によるもので,E. O. Wilson自身は(理論的な諸問題への理解が怪しい中で)それに賛同して,社会性昆虫についてのコメントを担当しているということなのだろう. いずれにせよE. O. Wilsonは「血縁淘汰・包括適応度理論を否定してグループ淘汰理論で真社会性を説明する」というのが自分自身の理論的な立場だと理解していると思われる.私はまだ読んでいない

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