マルクス主義について、論争史的に論じてみることにする。わが国では、マルクス主義の理論的研究の歴史が厚いにもかかわらず、冷戦終結以後ほとんど顧みられなくなっているという現実がある。一般にこれは、我が国の思想史一般に言える傾向であり、次々になりゆく勢いにつれて流行を追うあまり、伝統とか正統というものが形成されず、以前に論じられた論争も結論も見ずにただ忘却されてしまうことになる。せっかく江戸時代に議論されてきた儒教の伝統が、明治になってほとんど顧みられなくなったようなものである。今日、マルクス主義が再び脚光を浴びつつあるが、そこでも以前に論争の的になった問題圏が忘却されているように見えるので、あらためて論争史的に議論してみたい。 順不同でこれまで論じられたことのある問題を列挙してみよう。 1) 何故「社会主義革命」が、マルクスの予言したように先進諸国で起こらず、後進地域においてのみ成功したのか?